続・足裏庵日記(9)  国立新美術館   中野 中(美術評論家) 

               

  上野の東京都美術館で発表を続けている公募美術団体は、いま、六本木派か上野派かで右往左往、思い悩み何かと議論を呼んでいる。つまり、六本木に新たに開館する新しい美術館へ移転するか、今まで通 り上野の美術館に留まるか否かで揉めているのだ。  

 会場を移すこと、留まることによるメリット、デメリットはそれぞれある。ただ肝心の利用料金をはじめ利用に関する諸条件がまだ明確にされていない。何よりもその辺りを早く明確にされないと、諸団体も対応に困ることだろう。  

 ところで、ここで考えてみたいのは新しい国立の美術館についてだ。  

 手もとに6月20日付の、国立新美術館設立準備室発行のプレス・リリースの写 しがある。このリリースは名称決定を報ずるもので、大きく 名称決定Y 「国立新美術館」と謳われている。  その決定理由として、「独立行政法人国立美術館の一組織として設置されることや、既設の4美術館との並びからも〈国立○○美術館〉とすることとし、館の特色を表す言葉として、既存の美術館にはない〈新たな機能を持つ〉という意味から〈新〉を館名に盛り込んだ」とある。  

 次いで、決定までの経緯が綴られている。それによると名称を全国公募し、総数一〇〇六点が応募された。この数が多いのか少ないのか、各マスコミを通 じ全国から一か月の期間、にしては少ないようにも思える。それだけ国民の関心が薄いのか公募方法に問題点があったのか。

 

バコキャン応募名称の内訳一覧によると、「○○美術館」「○○ギャラリー」「○○展示館」の三パターンに大別 され、東京国立美術館18、国立日本美術館17、国立現代美術館13、ナショナルギャラリー8、国立六本木ギャラリー4、国立美術展示館9(数字は応募数)などが上位 にきた。しかしこれら30ほどの名称の中に「国立新美術館」はない。シンプルでわかり易いといえばそれまでだが、決定理由の一つに最初から予定されていたと憶測できぬ こともない。公募はあくまで手続きの一つだったかも知れない。参考までにユニークなものとして、芸術と人がクロスする「アークロス」、アートとアリーナを組み合わせた「アルティアーナ」、あるいは「夢の館」、「やすらぎ美術館」、さらに「うたたね」「ふらり」など理解不能もあるのだが。それにしても何の変哲もない新名称、官僚のセンスでは落ち着くべきとろこに決まったというところだろう。  

 それよりも「新」の理由に「新たな機能を持つ」という理由付けがなされていることだ。事業として、企画展、情報収集・提供、教育普及、周辺地域との連携・協力、とある。格別 新しさは見られないが、隠し技裏技があるのかも知れぬ。気掛かりは、美術館機能の大きな柱の一つ、独自の収蔵品を持つという機能が皆無なことだ。これでは単なる貸し展示館ではないか。名称ダオレにならぬ よう伏してお願いするばかりだ。  平成18年秋の開館予定ときくが、使い勝手が良く、観る側に親切な建物であって欲しいと、これまた伏して願うばかりだ。

 

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