折々の眼(12)  “角”と“端”を活かす展示構成法  ワシオ・トシヒコ(美術評論家)


              

 展覧会における展示構成の意義と重要性については、いつだったかそのあらましについて述べた。これからいよいよ、具体的な各論編に入る。毎回というわけにはいかないけれど、できるだけ機会をつくって書いてみようと思う。  

 画廊や美術館などの展示スペースを、その形状から  “キューヴ”とか “スクェア”と親しんで呼ぶことがある。四面の壁に囲まれて成り立っているからだ。なかでも、各壁面 の中央(センター)部分がもっとも展観者の眼を惹くので、展示には絶好の位 置とされる。事実、各壁面の中央にまず配置する主要作を決めることから、全体の展示構成の作業が始まるわけである。中央に置く作品が決まれば、あとは順次、その左右へ並べて行くのが常套だ。  
 

  角(コーナー)と端(エッジ)がもっとも軽視され、嫌われる。なぜか。作品が中央部分から外れて目立たなくなるからである。それなら、その部分をどうかしてやろうじゃないか。それが判官びいきの私の性分というものである。中央ばかりが、いつも中心であってよいわけがない。工夫次第で、角と端だって強く自己を主張し、際立つ中心と化して脚光をあびる権利がある。角と端をどのように活かすか。以来、角と端が展示構成のメインテーマとなっている。  
  では具体的に、いったいどうすればよいのか。

 角の場合、そのコーナー全体を作品(できれば自信作)で塞ぐとよいだろう。つまり、三角部分を作品ですっかり隠してしまうのだ。頭上の真下から三角部分の空洞が見えるけれど、外側からは決して観えない。外見上、かえってとてもおしゃれに観える。  
  もう一つの方法は、直角に接する壁面と壁面との作品の間隔をできるだけ狭め、中心の角へ角へと寄せて並べるようにする。もしも連作なら、角をそのまま活かし、直角に折ったように観える展示にすればよい。するとそこに、三角の空気の溜めができる。展示空間全体に、もう一つの新たな空間ができるというわけだ。  以上のようにすると、展示構成のポイントが角全体にかかり、あたかもスペースの中心であるかのような観え方をするようになる。  
 

  端の処理法としては、最端箇所の壁面部分を広くも、狭くも空けないこと。むしろ端に合わせるように、作品の側面 をぴったりと寄せるとよいだろう。展示全体が詰まった感じというより、次の壁面 への連続的展開性が暗示的に強調されるから、スリリングで、スマートな印象を与えることとなる。  私の実践例以外に、これまで角と端にポイントを置いた展覧会など、あまり観たことがない。展示構成の現状を変革する要と冒険心に、いささか欠けるのではなかろうか。

 

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