折々の眼(21)  久々の訪中「第2回北京ビエンナーレ」 ワシオ・トシヒコ(美術評論家)



              

「シンポジウムのパネリストとして、北京ビエンナーレに出席してもらえませんか」。入江観さんから突然、こんな電話があった。昨年の暮れである。入江さんの要請だし、海外へ出かけるのもまったく久しぶり。内容と日程次第で、前向きに考えましょうと応えた。  

  まもなく、実質的な主催者の中国美術家協会との仲介役である日本中国文化交流協会から、超豪華で分厚い第1回展のカタログと開催要項が届いた。内外からの出品作の傾向から判断すると、先発の上海ビエンナーレがコンテンポラリー系とすれば、こちらはどちらかというと、どうもモダンアート系らしい。  

  第1回展の日本の招待出品は、高山辰雄さん。入江さんが、シンポジウムのパネリストを務めている。1ヵ月の会期中に、約2万人もの観客を動員したとなれば、首都開催の面 目を十分に果たしたといえるだろう。その勢いに乗っての第2回展、というわけだ。とりわけことしは、中国にとって「世界がファシスト戦争に勝利して60周年」と位 置づけられる節目。是が非でも成功させなければならないという、熱い意気込みを感じさせる。50余の国々の代表的アーティストと、影響力のある作品から約500件が選抜される、という。  「

  第2回北京ビエンナーレ」を主催するのは、中国文学芸術界連合会、北京市人民政府、中国美術家協会。中華世紀壇と中国美術館を会場に、9月20日から10月20日まで開かれる。会期中のシンポジウムについては、ハイテク都市化で注目される合肥で行われることになっていて、飛行機で移動する。。

 シンポのテーマは、「現代芸術と人文関懐」。「人文関懐」とはまったく目にしたことのないことばだが、中国国外の学術界から入った概念らしい。人間の価値と尊厳、人格の完成、人間の精神層面 の問題に大きな関心を寄せること、という。具体的には「現代芸術の人類社会生活と公衆に対する関心」、「現代芸術の人類平和理想に対する追求」、「現代芸術で人と自然の調和のとれた発展を促進する」といったふうに、三つに分割して考えてもよいらしい。そこで私は、三番目についてスピーチすることにした。  

  今回の日本からの招待出品者は、大沼映夫、大矢紀、斉藤研、中野嘉之、三浦明範の皆さん。私は初日から10日間、多忙で訪中が無理な大沼さんを除く4人と行動を共にする。私の訪中はこれで3度目だが、だいぶ間が空いた。合肥では、山水画の題材にされて知られる奇峰が連なる黄山への観光も予定されている。楽しみといえば、楽しみなのだが…。10日間の旅の体調が、ちょっと心配になる。  しかしこれは、オフィシャルな仕事だ。内外の関係者に、迷惑をかけられない。中国では通 用しない片仮名書きのペンネーム「ワシオ・トシヒコ」としばらく別れ、本名の「鷲尾俊彦」で、潔く飛び立つしかないだろう。

 

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