折々の眼(26)  
公募団体活性化二つの妙案 
ワシオ・トシヒコ(美術評論家)



              

 若年層の公募展離れと在籍者の高齢化で、多くの美術団体が慢性的な経営難に追い込まれている。高齢会員が順送りに他界し、応募者が年々減少する現状では、財政面 はもとより、作品の質的向上を図るのも並大抵でないだろう。各美術団体は今、その打開策を懸命に模索している。  
  その一つとして注目したいのが、中央美術協会の動向だ。来年の第59回展から、二十五歳以下の応募者の出品料を無料にするという。当面 の出品料がまったく見込めないにしても、継続的に出品を促すことにより、将来的な増収と新しい才能の発掘に賭けようというわけである。妙案というより、勇気のある決断といってよい。前途に期待したい。  
  もう一つは、日本文人画府、全国平成小墨画協会、亜細亜太平洋水墨画会の三団体が、去る四月下旬から五月初旬にかけ、ギンザ・タナカホールで「第一回合同水墨展」を開催したことだ。個別 の本展とは異なる三団体合同の特別企画、というわけである。相互に協力しあって合同で催すことにより、高い会場費が均等割に軽減され、数倍の入場者増が見込め、何よりも所属団体を自覚する競作意識で作品の研鑽が積めるだろう、という思惑と利害が一致してのスタートとなった。 
  ただこの異なる団体間の合同展、落し穴があることも警戒しなければならない。会場費の割安と入場者増ばかりに囚われすぎると、勢い作品の質的レヴェルを不問とする展覧会に堕ちないとも限らないからだ。あ 

くまでも、異なる団体間で競作する高い意識を前面 に出す合同展にしなければならないだろう。安易な取り組みの合同展には、危険が伴なう。しかし互いに信頼して真剣に取り組めば、その豊かな実りは計り知れない。  
  たとえば毎年、新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で開催される「損保ジャパン美術財団選抜奨励展」というコンクール展がある。各団体で財団奨励賞を受賞した作品と推薦委員による個別 に推薦された作品が一堂に展示され、再びその成果のほどを競うコンクール展だ。これは、合同展ではない。けれど合同展に近い性格を秘めている。つまり、各団体がその年度の本展のなかから、「選抜奨励展」へもっとも送り出すにふさわしい作品を厳選し、会を代表して他団体との他流試合に臨む意識を高めることにより、はじめてその意義が実現されるコンクール展なのである。合同展もまた、そうした意味で団体から厳しく選抜される作品で編成されるべきだろう。  
  画壇にかつての六大学野球の早慶戦のように火花を散らす、ライバル団体間の合同展がいくつか実現すれば、それこそが美術公募団体全体の活性化につながる起爆剤となるかもしれない。とりわけ中小団体の活路を拓くチャンスになると共に、団体再編の基盤づくりととなるかもしれない。美術公募団体はもっと相互に風通 しよく、発想を大胆にすれば、自ずと活路が拓かれるのではないか。

 

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