折々の眼(29)  1月23日に曝すわが正体 ワシオ・トシヒコ(美術評論家)



              

 急いで筆を走らせる今は、まだことし。本紙がめでたく皆さんのお手許に届く頃には、新たな年になっているので、ここでは、昨年のこととして書き出すべきなのだろう。  

 その昨年の11月、東京・大田区主催の「在住作家美術展」が区民ホールで開かれた。活躍する作家が多いエリアだけに、予想以上に内容の濃い展観となった。わけても関心を集めたのが、二十回展を記念する特別 企画の講演会である。高頭信子さんが「花火と私」、弦田英太郎さんが「舞妓と私」と題して話した。洋画的題材の花火を日本画家が、また日本画的題材の舞妓を洋画家がテーマとしたのが幸いし、大いに盛り上がった。当日、私も出掛けて高頭さんにお会いしたところ、講演の後半部分で、以前或る新聞の仕事で、彼女の「富士と花火」という絵に、私が詩をつけた作品「打上げ富士」を朗読してくれないか、と頼まれた。ベストコンデションではなかったけれど、何とか役目をはたすことができた。観客の前で自作詩を朗読するなど、いったい何年ぶりだったろう。

 こう見えても、かつて私には “詩人”と称される時代があった。金子光晴の「あいなめ」、土橋治重の「風」などの同人だったこともある。現在も在籍する日本現代詩人会の理事を、一期だけ務めた。三冊の詩集と一冊の現代句集。それが詩人としての私のささやかな遺産だ。しかしながら、詩人をつづけて行くには、どこか安定した職場に定着しなければ食べていけない。そうこうするうち、いつの間にやら美術の世界へと越境してしまっていた、というわけである。   

 さて自作詩朗読の件だが、まだ次のニュースがある。高頭さんの講演でのハプニング出演からしばらく経ってから、なんと今度は、正式に自作詩朗読の誘いが飛び込んできたのである。詩の朗読を内外でプロデュースする旧友の天童大人からだ。それもあろうことか、自作詩朗読とトークの私だけのエキジビジョン・ナイトだ。1月23日(火)。午後6時30分開場、7時開演。会場は、地下鉄日比谷線の六本木を下車し、アマンドの脇の芋洗い坂を下ったストライプハウス・ギャラリーという可愛いスペース。25席満席なので、できるだけ予約(03―3405―8108)してほしい、という。但し料金が予約2,500円、当日2,800円で、庶民感覚的にはちょっと高いかもしれない。それは、〈詩人たちの肉声を聴くラウンドポエトリーリーディング(巡回朗読会)〉という、或る種の運動の一環だからなのだろう。ストライプハウス・ギャラリーを初めとし、ギャルリー東京ユマニテ、スター・ポエツ・ギャラリー、ギャラリー・アートポイントを会場に、十一月からスタートしている。これまで白石かずこ、高橋睦郎、藤富保男、中上哲夫、八木忠栄、伊藤比呂美、高柳誠などが出演。現役から遠ざかっている老いさらばえた私の正体を覗きたい向きは、ぜひどうぞ。

 

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