続・足裏庵日記(56)  ―コンクール ―  中野 中 (美術評論家)


 損保ジャパン美術財団による選抜奨励展が、来春の31回展をもって打ち止めになる。かわって2013年からは新しい方法での公募による美術賞(コンクール)展を開催する準備がすすめられている。但し、公募美術団体ごとの奨励賞は今後も継続するが、既得36団体の見直しと新規団体参入の可否も検討したいとする。


 去る7月21日、損保ジャパン本社ビルで、関係団体と推せん委員に右について概要の説明会があった。


 当財団は1976年の創立以来「新進美術家の創作を奨励し美術家を支援する」ことを定款にうたい、その目的・理念は「新進美術家の制作意欲を刺激し、日本美術界に清新の気風を注入して、世界に伍する世界水準を目指す」という壮大なものであり、具体的には、50〜60歳程度の中堅作家を対象とする「大賞」、新進作家の支援を理念とする「奨励賞」(団体ごと)、そして奨励賞受賞者と10年前から導入した推せん制の併用による「選抜奨励展」の3本立てで進められてきた。


 しかし「大賞」は近年、高齢かつ功名ある画家が多くなり2年前から休止。そして今、「選抜奨励展」も時流を的確に反映していないとの理由で見直しの段階にある。


 かつて、安井賞を継ぐ存在に、と期待されたが、とてもそこまでは致らなかったというのが、正直な評価であろう。

 「選抜奨励展」について言うならば、見直しを迫られた最大原因は美術団体に提供した「奨励賞」のあり方によると思われる。団体ごとに授賞し、その作家たちを一堂にした展覧会を開くというアイデアに間違いはなかった。発足当初、どういう基準と査定で授賞団体を選定したのかは知らないが、今となっては各団体から出てくる作品の質のバラツキ(手法や傾向ではない)がひど過ぎることは誰もが認めることだ。だからこそ、ここへきて見直しをせざるを得なくなったわけだ。既得36団体の見直し、並びに新規希望団体についての勘案はぜひ行うべきだが、繰り返すが、課題の根本的解消をはかるには「奨励賞」のあり方を改変しなければなるまい。


 とにかく、賞を出しっぱなしで扱いは一切各団体に任している現状がいけない。キャパシティの大きな団体はともかく、中・小の団体が数十年にわたって質を落とさない作品を送り出すことは至難のことで、不可能とさえ言える。かといって見識をもって該当作なしとは、せっかくの賞に対して言えるものでもなかろう。となれば的確であろうとなかろうと、水準を維持しようがしまいが、強引に受賞者を出すことになる。結果、奨励賞展の全体に大きなバラツキが生まれ、展自体の評価も低くなる。


 ここはやはり第3者を入れて授賞作を選考すべきであろう。そして作品の質的水準を守り、高めることだ。それにはクリアーすべき多くの問題はあろう。しかしそうでなければせっかくの賞の意味はなくなるし、強いては新美術賞(コンクール)も理念倒れになる惧れなしともしないのではないか。以上、愚考する次第。

 

topページへ
2002〜2010 essayへ