続・足裏庵日記(58)  ― Artist Group―風 ―  中野 中 (美術評論家)


 2011年「今年の漢字」(財団法人日本漢字能力検定協会主催)に〈絆〉が決定し、京都・清水寺貫主が特大の和紙に墨痕鮮やかに書きあげる姿がテレビに映しだされた。私にはほとんど想定内であった。がほぼ50万通の応募の12・4%というから、それほど圧倒的ではなかったようだ。ちなみに2位は「災」、3位は「震」と続いたが、1995年の阪神大震災の年が「震」だったと記憶する。
 東日本大震災や台風被害で家族の大切さを感じ、支援の輪も広がったことに加え、女子サッカー・なでしこジャパンのチームワークなどが理由だという。国民栄誉賞にまで到ったなでしこジャパンは時の勢いに乗った政府の人気取り政策であって、なでしこジャパンに何の罪もないが、政府は国民との絆をどんどん細くしている。それにしても震災で家族の大切さを感じるとは、何と悲しいことだろう。日頃の絆のなさの裏返しでしかない。善くも悪くも、品の悪い言いようになるが、いっときつるんでいるだけではないか。「絆」に素直になれない自分はひねくれ者であり皆の環に入れないのだろうが、敢えて意固地に生きようと思う。独立自尊、孤高に生きる、とは言わないまでも。
 扨て、2012年はどんな年になるのだろうか。復興(というより再生というスタンスで進めるべきだと思う)に追われながら、消費税をはじめとする増税、保険・年金、不況克服、TPPや外交問題、等々難しい問題山積である。美術界も進むべき方向が見つからない閉塞状況が続いている。いくつかの小さな山が次から次へと登場するが、すべて一過性で終ってしまっている。

 新しいこと、とは何なのか良くわからないから暗中模索状態が続くのだが、そのいずれもが軽佻にして浮薄に思えて仕方ない。先を見つめることは大切なことで必須事項であるが、それは足もとをしっかりさせてからでなければ、ほとんど意味はない。
 私はあえてアナログにこだわっているのだが、加えて無国籍(時に国際的などと言い換えられる)でなくドメスティックであればもっといい。
 新しい年の私のキャッチフレーズで行こうと思っていたところ、同じ考え(趣旨)の新規の公募展が立ち上がると知った。
 企画したのは日本画家の中島千波・中野嘉之・畠中光享の3人で、その名は〈Artist Group―風―〉。芸術は人間のため、人間を高貴たらしめるためのものでなければなりません。と〈企画概要・主旨〉文の冒頭で高らかに謳っている。人間を高貴たらしめる、などすっかり亡失していた精神であり、心の鼓動を高らしめる。続く文言にも彼らの理想を語る思いが格調高く続く。「横の会」「目―それぞれのかたち」そしていま日本橋a島屋で三人展を続ける同世代の同志の、思いのたけが堰を切って落とされた。
 2012年秋、東京都美術館で開催。45才以下、平面、5年間は入選10名で1人10メートルの壁画。新鮮で有能なアーチストの発掘が俟たれる。

 

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