今月の課題 「明日への夢」美を継ぐ者たち 発刊に際して  編集主幹 松原 清

 

弊紙企画の「自選ギャラリー」がスタートしたのは、1998年の8月号からである。  
  当初は、「自選自賛」というタイトルで、これまで思い出に残る作品に自ら賛をつけるという意で始めさせていただいたが、自画自賛のニュアンスに何となく繋がってしまうという意見をいただき7回目より「自選ギャラリー」に改題して連載を続けた。将来単行本としたい旨を先生に告げての原稿依頼をお願いしていたので、何としても5年、120名程は頑張りたいと思ったことは本音だが、まさか、これが7年と10ヶ月もシリーズとして繋がるとは思いもよらなかったし、シリーズの終美を芸術院会員の先生方に飾っていただくことが出来たのもうれしい。というのも、原稿を先生自身に記していただくということはそれなりの時間を割いていただくことになり、また、文章を書くのが苦手という先生も多く、毎月2名の先生に御了解をとりつけるのに綱渡り的な思いを繰り返したことが何度もあったからである。締め切りを目前に先生に急用が入り、原稿を頂けなくなり右往左往したことも。編集者の宿命といえばそれまでだが、本シリーズを担当していただいた平野杳さんには毎月毎月胃の痛くなる思いをおかけしたと思う。そういう私も同じで、こうして一冊の本に纏めあげられたことが何よりの良薬であり、全美の新たな財産となったことを今素直に喜びたい。
 さて、単行本にするにあたって一番頭を痛めたのが、長期連載による時系列のずれであった。編集者としては オリ

 

ジナルの原稿は誤字、脱字、ニュアンスの補文・手直しに限って確認いただき、現在の略歴に入れ替えるという方向ですすめる予定であったが、「最近思うこと」を短文で入れることで、時系列を今に近づけ、より内容が膨らむのではないかという思いから、必要と思っていただいた先生方には「最近思うこと」を付記させていただくこととした。  
  この本のタイトルを決めたのは、全美20周年記念展として、本に登場いただいた先生方による展覧会を開催しようと思い立った時である。芸術家はすべて「美を継ぐ者たち」ではないか、自分一人で何から何まで築いてきたものでない。師や友やライバルの影響を受け、古典に学び、今を創造しようと努力している。それは終りの無い美の探求の世界であり、その成果 が次代の者へと受け継がれていく。明日への夢を持って、生きた証を残すために。そうした思いをタイトルとさせて頂いた。  
  全163名に及ぶ登場作家、ジャンルは日本画、洋画、彫刻、工芸、書と様々であるが、あえてジャンル、序列に分類せず50音順に紹介させていただいている。ほんの500余文字に凝縮された文章だが、それぞれの人生観に基づいた煌めきがあり、読者はきっと生き方に共感できる幾つもの文章に出会えるであろう。そして作者の作品に改めて深い視線を注ぐようになるであろう。本書がそんな広がりの一助になれば、これに優る喜びはない。


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