夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円
今月の課題 「絵金祭り」3   編集主幹 松原 清
 「花衣いろは縁起」は、三好松洛、竹田出雲作の人形浄瑠璃で、寛保2年(1742)に竹本座で初演されたとある。物語は、〈山中左衛門慰義継は社寺再建奉行として京都に滞在中に小督という女性と契り、男児をもうけ三之助と名付ける。左衛門には許嫁があるが、夫婦は幼児をつれて近江の志賀の里に隠れ農夫となる。ある日、大鷲が飛来し幼児の三之助はさらわれ、ふたりは狂気する。左衛門の死後、母小督は諸国を訪ね歩き、幡随院随波上人に拾われて成長し幻想上人となっていることを知り、幻想上人の法談の席で再会をはたす〉というもの。歌舞伎では「二月堂良弁杉の由来」としてあるが、絵金没後の初演のため、当初「二月堂.・・」がこの絵の題としてあったが、改題されたという。  
 この絵の凄いところは、迫力ある近景の人物活写と、時間をずらせて幼児を攫った大鷲を見上げる志賀の里の人々を描いた中・遠景の対比であろう。特に左上隅を頂点として、風を巻き起こして飛び立つ大鷲、小督、左衛門が三角形構図で描かれ、左上への強烈なベクトルを生み出している。よく見ると大鷲の頭と羽と足の関係が怪しいが、あえてそのように描いたと思える。かつて絵金は江戸に遊学したおり北斎の浮世絵を好んで学び、江戸土産に「北斎漫画」を持って帰ったと云うが、この作品にもふんだんに北斎の画風が用いられている。 
  午後8時を回った頃になると狭い赤岡の路地は人で一杯になった。途中、ふるまい酒(地酒)をいただきながら再度流れにそって歩いた。明るい時に見た芝居絵が、
一貫蝋燭のゆらめきに映しだされてガラッと様相を変える。大勢の人が絵を取り囲むように見入っている。関連催しで「よさこい踊り」のステージも賑わっている。   「絵金祭りはいかがですか」といきなりマイクを向けられた。新聞記者の現地取材であった。私はびっくりしながらも、一観光客として歴史あるストリートギャラリーの凄さを話した。横で美術通 信のTさんと、水墨画家のKさんが意味あり気ににやにやしながら私の話を聞いていた。当日姫路からKさんの知人の水墨画家の御夫妻も高知入りし、一緒に巡ったが、夫妻は二度目だという。じっくりと再度見たくなったのだとお聞きした。やはり祭りは現地に行かなければ味わえない。また、たぶん見に来たくなるだろうなぁと私自身も思ったしだいであった。  
  次の日我々は、Kさんの夏用として借りているアトリエを訪ねた。仁淀川の上流に位 置する渓流横にあり、絵になる風景だ。また鮎もふんだんに捕れるという。その鮎料理と鰹のたたきを御馳走になった。Kさんは板前の修業をした腕前で、青い真竹で串をつくり囲炉裏に鮎をさしていく。鮎の刺し身も初めての経験だった。また、直前に渓流の岩場でワラでいぶした鰹のたたきは絶品、わらの香りが残りそこここの居酒屋では味わえないものであった。その青竹割りとワラのいぶしを我々も手伝い、渓流の水から引いた水道のシャワーで汗を流した後の酒と料理、20周年のイベントの疲れも癒された「絵金祭り」の2日間だった。 (完)

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今月の課題