夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円
今月の課題 「 忙中閑アリ 」   編集主幹 松原 清
 6月の神戸全美20周年のイベントが終り、あっという間に11月になる。この4ヶ月の間に何があったのかを振り返ってみると、案外何も浮んでこない。で、手帳を広げてみた。仕事以外に何をして過ごしたかと探すと、7月に高知へ「絵金祭り」で二日間出かけている。これはちゃっかりこの課題に3ヶ月書かせて頂いたが、ほっとした時間を過ごすことが出来た。8月はお盆に郷里徳島に帰省したが、神戸の飲み友達が一度阿波踊りを見たいというので、それなら実際に踊ろうかと話がすすみ、徳島の友人に頼んで「連」に入れてもらうことが出来た。私自身32年振りに阿波踊りに参加したが、どうも身体がついていかない。運動不足が祟って足が痛くなったが、初めて参加した3人はすこぶる元気で、次の日にゴルフをスルーで楽しんで帰ったと聞いて唖然。でも、あのお囃子は聞くだけじゃつまらない、踊ってこそ良いもんだと改めて思ったしだいである。そして9月は展覧会、祝賀会が目白押し。取材取材に明け暮れ、9月30日に劉蒼居氏の悲しい訃報に接する。まさか、という驚きと脱力感におそわれる。10月1日のお通 夜は劉氏の無念を思うとくやしくて言葉も出ない。筆者自身これまで応援してきたし、劉氏との20年のおつき合いが走馬灯のようによぎった。10月もぴっちりと取材予定がつまる中、22日能登行きを敢行。これも初代徳田八十吉の没後50年のイベントに合わせてのことだが、久しぶりに愛車を走らせた。先ずは、小松市立博物館をめざ して。実は4月の息子の結婚式の折り、両親にということで旅行宿泊クーポンをプレゼントされていたのだが、行く機会がなく延び延びとなっていたので、この際に和倉温泉に泊まろうと決めてのことであった。 
  片道520キロの道程はけっこう厳しいものだったが、100年の歴史を持つ加賀屋の姉妹館「あえの風」でじっくりと寛いだ。流石に宿の係りの対応が洗練されていて気持ち良く、マンボウの刺し身を初体験し、海横の露天風呂も最高だった。外国には何度かふたりで出かけたが、夫婦ふたりだけで温泉に泊まるのは結婚以来初めてではなかっただろうか。次の日、和倉から輪島へと足を延ばす。残念ながら朝市は時間的に間に合わなかったが、30年振りの能登の交通 網は驚くほど整備されて快適であった。輪島塗りの実践作業を見学し、せっかく来たのだからと御迷惑を承知で日展理事の井波唯志氏のお宅を訪ねた。もちろん先に電話でその旨を伝えてはいたが、急な訪問にも関わらず御夫婦で丁寧な対応をしていただき、作家人生の貴重なお話を伺うことができた。帰路はあいにくの雨模様、金沢あたりから雨で前が見えないほどの土砂降りとなり、山間部の高速道路は路面 に水流が走りタイヤをとられて滑りそうになる。とにかく目が疲れてしまった。休み休みして加古川に着いたのが夜の11時前。出発から5時間半が過ぎていた。  やはり、どんなに忙しくても心にゆとりを持ちたい。忙中閑アリである。

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今月の課題