夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円
今月の課題 「世界的異常気象がもたらすもの 」   編集主幹 松原 清
 この数年来世界的な異常気象が頻繁に報告されているが、昨年の12月から今年1月の短期間にも数々の異常気象が起こっている。北極圏を含み、ロシアの西部から東シベリヤにかけて暖冬が続き、暖冬で冬眠できない熊が出たとか。モスクワでも1月の大半の気温が氷点下にならなかった。ブルガリアでは1月に20度を記録、米ニューヨーク州でも平均気温ゼロ度の1月上旬の気温が22度まで上昇、それが中旬になると米西部から中部にかけて異常低温となり、ワイオミング州では例年を15度下回る氷点下26度を記録。カリフォルニア州では過去最底の氷点下3度となり、オレンジをはじめとする莫大な農業被害が出ている。南半球も異常で、オーストラリアでは1月、観測史上最大の干ばつに見舞われ、牧草も育たない異常事態に。アフリカのケニア、ソマリア、エチオピアでも記録的な干ばつで800万人が食料支援を必要とした。着実に砂漠化が進行しており、アフリカ最大のビクトリア湖をはじめ多くの湖が縮小している。更に砂漠化が進むと象などの大型野生動物が絶滅の危機にひんするようになるという。反対に豪雨による洪水で大きな被害を出したマレーシア、ブラジル、アンゴラなど干ばつの歪みがある地域への集中豪雨となっている。  
  こうした現実を背景として2月2日、国連「気象変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第1作業部会が地球温暖化の分析・予測をまとめた第4次評価報告書「気候変動2007-自然科学の論拠」を正式に発表した。
報告書の骨子は■今世紀末の平均気温は20世紀より最大で6.4度上昇する。■今世紀末の平均海面 水位は20世紀より最大59センチ上昇する。■今世紀後半には、北極海の海氷が晩夏にはほぼ完全に消える。■過去100年間で平均気温は0.74度上昇しており、6年前の第3次報告者時の0.6度より温暖化が加速している。というもの。洪水、干ばつ、暴風雨、雪氷融解など世界中で見られる異常現象を、人間活動による二酸化炭素など温室効果 ガス増加に起因する温暖化と明確に位置づけており、京都議定書とその後の現実達成度を巡る国際協議の重要性を再提起している。  
  いよいよ温暖化現象が人類存続に関わる深刻な問題として身近に肌で感じるようになってきた。それでも世界最大の二酸化炭素排出国のアメリカは今でも京都議定書に批准していないし、それ以上の排出が懸念される急進成長国の中国、インドは発展途上国を自認して「先進国が削減義務を果 たすのが先」としていずれも削減対策に消極的な姿勢を崩していない。本当にこんな状態でいいのだろうか。経済優先が正に人類を滅ぼす可能性が濃厚になってきた。一時エコノミックアニマルと世界から揶揄された日本だが、国益のみ優先で他国がどうなろうと知ったことでない態度はどうやら軍事大国に移りつつある。でも、他国に義務を転嫁しても確実に地球はおかしくなる。我々は何をなすべきか、人類最後の決断の時を逸しては未来はない。

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今月の課題