夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円
今月の課題 「台湾故宮リニューアルオープン(2) 」   編集主幹 松原 清
 第1日曜日に入場料無料というのは確かルーブル美術館やオルセー美術館などフランスで経験したことがあり、日本のシステムとの違いを痛感したものだが、お正月に国立博物館が無料になる台北の文化政策にも正直驚いた。当然家族連れ、カップルが多く訪れ、賑わっていたが、ひとつ興味あるイベントがなされていた。小川、干潟に蛙が少なくなっていてそれが自然環境に大きな影響を与え始めているということを模型や、片足の蛙、乱開発、川の汚染などの写 真で示したもので、大量の蚊の発生や川魚類の減少など生態系を狂わせているということを説明書や録音ボイスで伝えていた。(と思われる。読めないし言葉は分からないので。)日本でも同様のことを最近新聞で読んだ覚えがあるが、台湾でも相当環境破壊が進んでいるようである。  
  その後昼食を台北駅近くの路地裏の小さな店で食べたが、それがべらぼうに安い。日本円で1品80円から150円程。以前香菜の臭いのきつさにまいった思いがあるので香菜抜きと伝えたつもりが出てきた鴨スープと焼きそばにきっちりと入っている。観念して口に入れてみたところ以外と臭いが薄い。そして味も良いのだ。あっという間に2時間が過ぎ、ホテルに帰ったが、東京組が到着したのは更に2時間後の4時前。現地送迎のガイドにきっちりとお土産店に連れて行かれたようで、どうやら高い「カラスミ」を既に買った人もいた。兎に角、当日は台湾料理を食べてホテルでゆっくりとし、次の日9時に故宮に向かおうということになった。
 春節は日本のお正月と同じで都会の道路はガラ空きだ。しかし、お寺への路は想像を絶する交通 渋滞である。台湾の人たちは日本人以上にお寺の参拝を大切にしているようである。私たちはタクシーに分乗し、一路故宮へと向かったが、普通 20分もかからない距離を1時間かけて到着した。  
  すでに故宮は人で溢れかけていた。外観は殆ど同じだが、エントランスはガラッとモダンになり、展示室も3年前の面 影は全くない。私たちは入場するや、真っ先に特別展「大観」の部屋に向かった。先ず書の部屋に入る。我々だけで他に人がいない状態。蘇軾「黄州寒食詩」、黄庭堅「松風閣詩」、米慳 「蜀素帖」は名品中の名品であろう。残念ながら蘇軾「黄州寒食詩」は前期(2月7日迄)の展示で見られなかったが、黄庭堅「松風閣詩」の律々とした楷書の響きには感動を覚えた。また、「蜀素帖」には米慳 の持つあらゆる書法が詰まっている逸品で、38歳の時の作品である。「蜀素」とは東川(四川省東部)で織られた非常に貴重な絹。目が詰まって純白の厚手の絹布に書かれたことからこの名がついたが、流れるように自在に変化する用筆と動感、そのリズムの流れの雄大さに驚く。次に絵画。中国絵画の確立期といえる北宋時代、後世の水墨画はこの時期に確立された様式や概念が核となっているといえる。今展には台湾国宝に位 置づけされている范寛「谿山行旅図」、郭煕「早春図」、李唐「万壑松風図」が同時展示されている。(続)

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今月の課題