夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円
今月の課題 「 オーストラリアへの旅  」  編集主幹 松原 清

 オーストラリアといえば、カンガルー、コアラ、タスマニアデビル等々独自の進化をとげた有袋動物の宝庫である。また、種々の毒蛇が多いことも初めて知った。日本の約22倍もの国土を有するが、その殆どが砂漠、不毛地であり、地球創世の古い時代に大陸移動で孤立化されたため、他の大陸とは異なった進化を辿ったと云われている。250年前に入植した人たちは天敵のいなかった有袋動物を食料、毛皮用に乱獲したため一挙にその頭数を減じてしまったと聞くが、今では国の保護動物に指定されている。また、コアラといえばユーカリの樹がセットとなっているが、ユーカリは成長が早く、大木になるので入植当初から国のあらゆる所で植樹され、ゴールドコーストでも街から山までユーカリの林が続いている。我々はサーファーズパラダイスという市にホテルを確保したが、名前のとおりサーフィンのメッカで70キロの砂浜を有する一大リゾート地で、そのスケールの大きさに圧倒される。外国からの旅行者も含め、世界のサーファーにとっては正に天国。一応海パンは用意してきたものの肌寒い気温まわりで、サーフィンと縁のない私達にはそれらを見学するのみだった。翌日、当初から予定していた世界遺産のグリーンマウンテン一日ツアーと現地予約の天体/土ボタル観賞に参加した。

 グリーンマウンテンは市内からバスで3時間あまり。ホテルから遠望できる山並の一区画(一山)で、そこは約900メートルを超えると亜熱帯気候となり、亜熱帯樹林が

生い茂っている。麓からずっとユーカリの林が続いているのだが、まるで区画整理をしたようにある地点から風景が一変するのである。常時霧に覆われる現象がおそらく数千年間続いた結果 、こうした地域が生まれたのだと思うが、温暖化が世界的に進行すれば当然この地も変わってしまうのだろう。私達は、大木に寄生してその大木を絞め殺してしまう寄生木や樹林に集う鳥たちを見ながら壮大な森林浴を楽しんだ。オーストラリアではカンガルー、コアラなどの動物ばかりでなく、鳥(色とりどりのインコ類)も天敵が少ないため、人を恐れない。だから、えさを差し出すと野鳥が飛んできて手にあるえさを啄む。そんな体験も出来たが、いろいろと考えさせられる。その夜、 土ボタル観賞に。 けっこうきついスケジュールだが、その名前に魅かれたのと、憧れのサザンクロスを見ることが出来るというので正に乗りかかった船。洞窟の中で青白い光を放つ土ボタルは、実は蚊のような姿態をした蠅の幼虫で、蜘蛛のように粘着性の糸を垂らし、自らの体を発光させてえさを誘っているとのこと。満腹時には発光せず、空腹時に発光するというから自然の摂理は凄い。ガイド曰く、「発光する蠅の蛆見学」では誰も参加しないでしょうと。土ボタルとは日本人観光客用の命名か。言いえて妙。天文観賞も雲間にどうにか星々をとらえた。次ぎの日は街を自由に巡ったが、アボリジニは何処にもない。翌早朝シドニーへ。 (続く)           


topページへ
今月の課題