夢遥  ゆめはるかU

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円
今月の課題 「 全美関東支局の開設 」  編集主幹 松原 清

 昼間せわしげに我が世の夏を謳歌していた蝉の声が聞こえなくなったと思ったら、いつの間にか朝夕めっきりと冷え込むようになってきました。昼間の暑さに騙されて薄着をしていた若者が夜、半袖で寒そうに歩いている姿をよく目にしますが、一方ブーツにエスキモーのような帽子で真冬かなと思うような服装の若い女性も見かけます。季節の変わり目には、そうしたいろいろなバラツキが目について興味をそそりますが、この秋も早急に去っていきなり冬になるかもしれないなぁなんて考えてしまいます。何しろ異常です。もちろん天候のことですが、この夏の暑さには正直参ってしまいました。スーツ姿での真夏の展覧会の複数移動はこれまでもきつかったのですが、一ヶ月以上続いた真夏日に加え、メイン会場が都美術館と国立新美術館に分かれ会期もずれて、月平均3回程だった神戸から東京への取材回数も月4〜5回に増加したので、本社での編集作業にもしわ寄せがでて会社に泊まり込む日数も必然的に増えました。家でゆっくりする日が殆どない状態ではゆとりなんか生まれる訳がありません。ゆとりが無くなればミスも増えるし、仕事も雑になってしまいます。「何とかしなければ」と思っていたところに「東京方面 に出るつもりなので、全美の仕事をまたやりたい」と九州から一本の電話がかかってきたのです。

 全美の昔からの読者なら覚えておられる方もいると思います。昭和63年から平成元年にかけて東京方面 の取材をお願いし、「あしおと便り」という編集後記も書いていた篠原一成氏からの電話でした。彼は国学院大学を卒業し、書道の勉強をしながら雑誌社に勤め、編集方針に合わない

と言って編集長と大げんかして退社。その後縁あって全美の東京支局を担当していただきました。熱血漢で持論もしっかりしていて、当時の美術界、書道界のあり方、また、美術雑誌や新聞の使命など酒を酌み交わしながらよく議論したことを懐かしく思い出しますが、一年ちょっとの勤務で、彼は「書」をもっとやりたいと高校の先生になって鹿児島へと赴任していきました。その後も交友関係はずっと続いており、教師を辞して数年前に「アートウオーカー」という新しい美術雑誌を始める時にもいろいろと先輩面 でアドバイスもしてきました。この雑誌は作家の個展に焦点を絞り、その個展の意図、作品作りの苦労話、主な出品作などを廉価(雑誌の買い取り)で紹介したもので、実際に個展を開きたい作家にはたのもしい後方支援となると思います。今回、そうした雑誌も全美の仕事として出来ればやりたいとのことでした。私も、作家取材を通 して「上製本」とまではいかないも、作家の「自分史」的な編集記事に仕上げる企画シリーズを前々から考えていたので、少し面 白くなりそうな予感がしております。

 今月号より巻頭右上に関東支局を記載しました。篠原氏は専門は「書」ですが、全分野に精力的に活躍していただく予定であります。


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今月の課題