夢遥  ゆめはるかU

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円
今月の課題 「 2008芸術の秋 」  編集主幹 松原 清

 熱暑の夏が初秋の心地よさを奪い去り、ようやく秋の気配が訪れたと思ったのは10月半ば。急速に朝夕の冷え込みを感じるようになり、冬が迫ってきている。10月31日より国立新美術館で第40回日展が開催され、芸術の秋本番となっているが、同館とサントリー美術館で合同開催中(12月14日迄)のピカソ展もお勧めだ。パリ国立ピカソ美術館所蔵から初期から晩年までの代表作約230点が貸し出されており、国立新美術館では「愛と創造の軌跡」と銘打った170点で時代を追ったピカソの足跡を辿り、サントリー美術館「魂のポートレート」では、自画像をテーマにピカソの内面 に迫る企画である。過去のピカソ展では、上野の森美術館で2002年「ピカソ 天才の誕生」から連続3年3回に亘る開催を思い出すが、ピカソが最後まで手元に置いていた作品群からなるパリ国立ピカソ美術館所蔵作品の一挙展覧はまた一味違うものである。

 そして4ヶ月を越えるロングラン開催(8月2日〜12月14日)で徐々に展覧者を増やしている東京都美術館でのフェルメール展である。世界中で30数点しか現存しないフェルメールの作品のなか、7点もの作品が一堂に展覧できる機会はそうあるまい。ただ、出展予定の目玉 作品であった「絵画芸術」が開幕間近に貸し出し不可となり、他の作品「手紙を書く婦人と召使い」に差し替えられたことは非常に残念だ。当初の展覧会広告には大きく「絵画芸術」の作品をとりあげていたため、会場に入り、その作品がないのは何故かと会場で関係者に質問する人も多くみ

られた。実際に開幕当日までそのパンフは多くの場所に展示されていたし、関係者は最後の最後まで再申請での許可を期待していたようである。実際、企画時に「絵画芸術」は所蔵先のウィーン美術史美術館より出品許可を得ていて、順調に準備が進んでいたのだが、今年5月にオーストリア文化財保護局より一時的貸し出し不可の決定が下され、それで再度許諾申請をしていた。しかし、修復家による専門的な調査の結果 、輸送による影響、特に温湿度の変化に伴い、保存状態の悪化が懸念されるという事由で、現地時間の7月31日(日本では8月1日までに数時間)に最終的に不可の連絡があったというのが真相である。かのヒットラーが最も愛した名画「絵画芸術」は2004年に「栄光のオランダ・フランドル絵画展」と銘打って東京都美術館と神戸市立博物館で日本初公開されており、展覧を逸した愛好家には期待の展覧会であったと思われる。それでもフェルメールのファンには未公開作品5点を含む7点もの企画は相当の魅力で、10月29日には入場者50万人を突破、この後さらに混雑が予想されると思われるので、早めの展覧を勧めたい。

 関西では、10月19日大好評のもと終了した「没後80年記念―佐伯祐三展」が見応えあった。山本發次郎コレクションを中心とした110点は佐伯の生き様を彷彿とさせる展覧であったが、大阪市立美術館のみでの開催は少し惜しい気もした。


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