夢遥  ゆめはるかU

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円
今月の課題 「 世界不況の年末 」 編集主幹 松原 清

 今年も師走となった。生きていれば時が過ぎゆくのは当たり前だが、今年は何かが違う。そう、世界不況のど真ん中である。プライムローンの問題で資金破綻を起こしたアメリカの銀行の影響が全世界へ広がっている。新年からどうにか110円台を保っていたドルが、3月に一挙に100円割れ、政府のてこ入れで9月までに110円まで回復したが、その後一挙に下落、今は1ドル93円台となっている。日本バブル崩壊前に一度80円台まで落ち込んだことがあると記憶しているが、バブルの金余りと超円高に日本企業がヨーロッパの名画ばかりでなく、アメリカの土地、映画会社まで買い占めたことがあった。その後バブルは崩壊し、アメリカの土地、建物、映画館も安く買い戻され、絵画などは半分にも満たない価格で売りに出されたのは周知のことである。9月以降アメリカ一国だった通貨危機が世界に飛び火し、7月〜8月に1ユーロ170円が今118円台、イギリスポンド210円台から140円台、オーストラリアドルも100円台から60円台になっている。当然株価も連動して動き一斉に下落、資産価値をどんどんと失いつつある。15面の動向にも記載しているが、美術のオークションもいよいよ厳冬期に入ってきたようである。一見、いま円が高騰して日本人が世界のものを買えるチャンスに見えるが、そうした投資家はすでに株や通貨下落のあおりで物凄い資産マイナスに陥っていると思われるため、動けないのである。しかし、マネーゲームに手を出していない日本の美術愛好家にとっては、収入の背丈に合わせて欲しい外国作品を手に入れるチャンスかもしれない。

 

 それとささやかな外国旅行である。今年2月、私は初めて赤道を越え、オーストラリアにアボリジニの作品実態をみるため小旅行をしたが、オーストラリアの物価の高さをいやというほど体験させてもらった。まさか円の換算レートが40%も良くなるなんて思いもよらなかった。こんなことなら、行くのを来年にしたら良かったと思っても後の祭りであった。それはそうと、ヨーロッパへも3年ほど出かけていない。もう一度現地で再確認したいリストアップした作品も増えてきたので、来年もしレートがこのままなら小旅行を計画したいと思っている。

 今年も、仕事に追われながらもどうにか年越しが出来そうである。10年ほど編集のほうを任せていたベテランのひとりが10月いっぱいで退社したので、目下おおわらわの状態になっており、関東に支局を11月より設置して動きだしているが、本格的稼働状態に早くのせなければと思っている。来年7月には神戸全美20周年で実施した「美を継ぐ者たち―明日への夢展」の第2弾を実施する。そのための準備も急ぐ必要がある。

 先生方にとって本年はどのような年となったでしょうか。この師走を健康で乗り切り、より良い年が迎えられますよう祈念したいと思います。この一年のご愛読を感謝いたします。


topページへ
今月の課題