夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円
今月の課題 「 最近の話題より 」 編集主幹 松原 清

 2月は逃げるであっという間に過ぎてしまった。世界的な不景気はなお更に加速し、世界中に合理化の嵐が吹き荒れ、失業者が増大、ドラスティックな対策を打ち出したアメリカのオバマ大統領の支持率も10%ダウンしているとか。米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が08年通 期で損失9.6兆円(08年10〜12月の四半期では5.8兆円と全米企業で史上最悪。ちなみに1分間毎4500万円の損失)となり、政府から2.9兆円の追加支援を受けるという。AIGは昨年から政府の実質管理のもとにあり、昨年9月よりの支援は4回目で合計14兆円以上にのぼる。この発表を受けてNY株が11年4ヶ月ぶりに7000ドル割れ、これが世界に飛び火し日本の株式も大影響を受けそうである。実は日本でもさかんに宣伝している安心終身保険のアリコはAIG傘下、傘下企業の株式も米政府に移管されるらしいが、本当に安心なのだろうか?

 なぜ、こんなにも世界経済が混乱するのだろうか。AIGは世界中の金融機関とデリバティブ契約を結び、強烈な行動部隊を持っていたようで、マネーゲームを支えていたプライムローンの破綻が引き金となり、つけの連鎖が全金融界を覆ったというべきか。変動相場制の金融が生んだ、お金でお金を売り買いする制限ない取引はとんでもない暴走を孕んでいるのである。株式にしても然り、本来は会社の将来性に投じて配当を貰うという本義が飛んでしまい、短期間に売り買いして株価の差額で儲けたい人が大半になってしまった。一年間に100万円を元手に2億円稼いだなどという話がテレビなどで話題に上るが、ハイリスクなのは当然のことで逆の場合も当然ある訳である。

 もうひとつ最近の話題から、クリスティーズでのイブ・サンローラン氏の遺品オークションについて。15面 にも記しているが、1860年の第二次アヘン戦争で英仏軍が北京の庭園「円明園」から略奪していた十二支の銅像のうち、うさぎとネズミの2像。2月25日、日本円で約39億円で落札された(落札者不明)と報じられていたが、3月2日落札者が中国人の蔡銘超氏と判明。蔡氏は、2日北京で記者会見し「今回落札した文化財が中国に持ち込めないなら、もちろん代金の支払いを拒否する」、「自分は略奪品を取り戻すための基金の顧問」と語ったと云う。この競売を巡って中国は猛反発、在仏中国人が中止と返還要求の提訴をしていた。また、中国国家文物局は2月26日、まだ落札者不明の時、「クリスティーズの文物出入国の申請を審査する知らせ」を出しており、文化財の持ち込みを申請する場合、出所の合法性を証明する必要がある。違法流出品の場合は恐らくその場での接収となるのだろう。ということは、中国文物局は落札者が誰か、すでに知っていたのではあるまいか。他国の人物が落札者なら、中国への持ち込み云々は関係ないはずで、あくまで返還要求で主張するはずだからである。

 約150年前の既存事実だが、所有権の主張の限界は?。


topページへ
今月の課題