夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「衆院選 民主圧勝 」  編集主幹 松原 清

 誰がこの劇的な逆転劇を予想しただろうか。小泉純一郎首相が衆院を解散し、「郵政選挙」で自民党をぶっつぶすと言って郵政存続派の候補者に女性を中心とする若手の候補者を立て、296議席の圧勝をとげたのは2005年のこと。それから4年、市場原理主義のアドバルーンを揚げ、懸案丸投げで何の責任も取らずの小泉首相が総裁任期を満了し、禅譲のかたちで安倍晋三総裁・首相へと引き継がれたが、安倍・それに続く福田両首相の政権投げだし辞任、麻生首相の国民とのぶれ、政権執着を見るにつけ国民の自民党政権への不満、不信感は一種ピーク状態となっていたといえる。そういう状態の中での選挙に追い込まれた自民党に勝機などあろうはずもない。民主党は「政権交代」をスローガンに、自民党は民主の外交・安保政策が曖昧、マニフェスト実現の財源問題を批判し「責任力」を全面に出しての選挙戦となったが、結果は、民主党が単独過半数を大きく上回る308議席(193議席増)を獲得し圧勝、自民党は119議席(181議席減)と半減する歴史的大敗北を喫し、1955年の結党以来、初めて衆院第1党から転落してしまった。

 日付は前後するが、29日の読売新聞1面に「拝啓 有権者のみなさんへ」と題した特別編集委員の囲み記事が載った。民主300議席越えの予測報道は、あくまで事前の予測だと記し、マニフェストの実現度を比較検討し、「党、政策、人」を冷静に考えて投票する醒めた目を持ってほしい。という内容であった。極めて異例なことである。しかし、自民党への政治不信は国民の中でどうにもならないほど大きくなっていた。国民は社保庁の泥棒まがいの管理の見過ごしや医療制度の改悪、派閥、党利でしか動かない体質に明確に「NO」を突きつけたのである。

 

民主に投票した多くの人が民主党でなければならないとの厳格な選択は決してしていないと思う。かつての自民支持者も民主に投票したと聞く。言い換えれば一度政権の座から退いて反省し、国民のための党に立ち返れというメッセージが込められているのである。民主党は圧勝したけれど、オバマの言う「チェンジ」と本質的に違っている。中間選挙から2年間全国を遊説しながら民意を問い続け、人物、識見が試された結果なのだ。二大政党をアッピールしてきた日本の民主党だが、「政権交代」の機運にのって大量の新人議員を誕生させた。が、それは小泉チルドレンの焼き直しでもある。マニフェストは作ったが、その実現の可能性をどれほど国民の意見を聞きながら説明したのかと言えば出来ていないし、党内でも意見が一致していない箇所も多い。ましてや今後、参院対策にPKOさえ反対の社民党と自民体質の国民新党と連立を組むという。前途多難は想像に難くない。

 リーマンショックに端を発した世界不況、資本主義の矛盾が引き起こした集約的現象であり、貧富の格差の増大が表面化してきている現在、人間本来の潜在能力や倫理観、文化的多様性を見直し、回復すべき時と思う。


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