夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「バンクーバー五輪に思う」  編集主幹 松原 清

 カナダのバンクーバーで2月12日開会された第21回冬季オリンピックが28日その幕を閉じた。オリンピックは、何があってもいつもテレビ観戦していた私だが、今回は仕事の編集時期と見事に重なり、テレビニュース、新聞報道で結果を知ることが多かった。真央、真央とメディア全部が金メダルを期待したニュース一色だったことが記憶に残る。私自身、キム・ヨナと真央の因縁の対決に少なからず関心をもっていたが、あまりにも加熱した報道が他の競技をマイナー化してしまった感がある。ジャンプ競技も結果がついてこず、長野五輪の時のような日の丸飛行隊の雄姿は見られなかったことは本当に残念であった。そんな中、偶然テレビ観戦できた競技で、これまで興味のなかったカーリング競技に関心がわいた。まさに氷上ビリヤードであり、戦略と綿密な計算、それに伴う技術とメンタル面が勝敗を決める静かな戦いである。日本はまだ競技人口が少なく、国レベルの取り組みに至っていないがよく善戦したと思う。


 この冬季五輪で日本は前予想の通りにやはりならなかったが、いろいろと考えさせられたことは多かった。


 

 ひとつは、暖冬で平均気温が4度も高い7.2度にもなり雪が降らず、一部競技場にはヘリコプターで大量の雪が運びこまれたことである。エルニーニョの影響だと言われているが、世界的な異常気象が恒常化してきている。雪の二日後に気温が15度も上がるように、日本も寒暖の差が激しくなっている。温暖化というのは、地球規模の平均値での傾向をさすのであって、もともと暑いところがより暑くなることも、また、その逆もあるだろう。 前代未聞の豪雪、豪雨、超大型台風に見舞われたニュースは年々頻度を増しているように思う。このところ日本は寒さが続いているので、つい温暖化なんて本当かなと思ってしまいがちだが、政府の二酸化炭素削減方針の実行はうまく機能しているのであろうか。中国、アメリカ、インドという大量排出国が前を向いて取り組みを始めなければ京都議定書は失速してしまう可能性が高い。 

 二つ目は開会式前、リュージュの公式練習で、グルジアのクマリタシビリ選手がコースから外れて周囲の壁や鉄柱に激突し死亡したこと。記録更新を意図して造られたといわれても仕方ないような高速コースで、最高155キロものスピードがでるらしいが、「クマリタシビリ選手が事故のおきたカーブに進入したときにそれまでの滑走の乱れを『適切に処理しなかった』のが事故の原因であり、コースに欠陥はなかった」との国際リュージュ連盟と五輪委員会の共同声明は、問題ありだろう。事故後、スタート位置を176メートル下げたと聞くが、事故後に行われた同コースでのボブスレー公式練習でも転倒事故が8件もあったという。共同声明に対し、グルジアの大統領が「技術的なことはわからないが、間違いなくいえることは、選手のミスが死につながることはあってはならない」とのコメントを出しているが、当然のことと思える。今後の課題だ。


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今月の課題