夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「日の丸の歴史」  編集主幹 松原 清

 国旗とは何だろうか。

 本来、国の象徴たる国旗の成り立ちを、その国の教育で教えないところは恐らくないだろう。国歌もまた然り。何故か、それは愛国心に直結すること、その国の人間としての誇りを持つ第一義の象徴だからである。しかし、私は小学校、中学校の義務教育のなかで学んだ記憶がない。ただ、漠然と日の丸は日本の旗であるという意識、国旗が掲揚されるとき、必ず国歌が流れる、又は斉唱するという認識は、朝礼や始業、終業、卒業式で必ず実施された時代であったため身のうちに入っていたが、国旗や国歌そのものの歴史を社会科の先生方は何も教えてはくれなかった。恥ずかしいことに、そのことについて社会人になっても詳しい知識もなかったし、あえて知ろうともしなかった。同時代の人たちも私と同じような意識であったのではないだろうか。戦後6年経って生まれた私でさえそのような状況であったから、最近の子供たちに至っては尚更に、国旗や国歌についての授業はなきに等しいだろう。卒業式にさえ国旗掲揚、国歌斉唱をやらない学校が増えてきたという流れの背景にいったい何があるのだろう。

 オリンピックやサッカーのワールドカップ、そしてワールドベースボールで、大勢の人たちが自国の国旗を持って熱狂的な応援を繰り広げる。日本人も同様で、選手たちもしきりと日の丸を背負う重みを強調する。国旗、国歌は日本人のアイデンティティーの拠り所として今も厳然とあるという証である。しかし、こと教育の問題になると違ってくるから不思議である。軍国主義への回帰へ問題がすり替わっている。


 

 確かに日本は軍部の暴走で、太平洋戦争へと突き進み、結果内外に大きな傷跡を残してしまった。しかし、何故日本は戦争という最悪の選択をしなければならなかったのか、という歴史の検証も大切であろう。実際にその検証は進んでいるし、極秘扱いされていたアメリカの資料も期限が切れて公開されはじめており、そうした内容も本当は教科書に盛り込むべきことなのである。中国や韓国の反日教育問題も根は深いが、日本自体が臭いものに蓋をして正確な歴史認識を子供たちに教えないことが、より問題を複雑化し、ひいては憎しみ合うような事態を未来へと引きずっていくことに繋がる。これは悲しいことだ。

  さて、日の丸が日本の国旗となった経緯であるが、聖徳太子が、「日出処天子…」と随の皇帝・煬帝に書簡を送っており、古来日本は太陽信仰の国で「日ノ本」という国の意識が「続日本紀」に具体的に記載されている。キトラ古墳時代の太陽表現は万国に見られる金色の丸、平家時代は赤地に金丸であったが、密教図で赤丸が現れている。仏教の影響で太陽色が赤となり、紅白が祝の色という色彩文化と結びついたのかもしれない。正式に日の丸が国の旗として決められたのは安政6年。翌年、咸臨丸で批准書交換で渡米したおり、ワシントンに掲げられたのが海外での日の丸第一号である。国旗制定は明治3年である。


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