夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「ワールドカップ所見」  編集主幹 松原 清

 日本国内で当初盛り上がらなかったワールドカップだが、予選リーグ初戦でカメルーンを1ー0で破り、俄然火がついた感がある。続く次戦に優勝候補と目されているオランダに0ー1で惜敗したが、3戦目のデンマークに引き分け以上で予選突破という状況になり、ヒートアップ。深夜の放送にもかかわらず60%の視聴率を記録したというから驚きである。結果、3ー1で快勝し、ベスト16入りを果たした。そして準々決勝での悲願の8強入りを信じて、それこそ日本全国民の目が6月29日のパラグアイ戦に注がれたといって良いだろう。しかし、私は原稿締め切りで事務所に缶詰め状態、もちろんTV観戦できず、翌朝に0―0でPK戦で敗退という結果を知ることとなった。


 ひと言でいって「よく頑張った」というのが大部分の人の感想ではなかろうか。あれほど大会前の強化試合で4連敗して、ファンにそっぽを向かれていた日本代表が、まさかここまでやってくれるとは思わなかった。マスコミは予選突破は到底無理、何故岡田監督なのか、とアンチ評を連日流したし、自然私たちも今回は期待できないなぁと思い込まされていた。では、何故好結果に繋がったのであろう。


 負けから岡田ジャパンがとった対策は、徹底的に守りに徹するフォーメーションである。そのため、フルタイムを走りきる体力をつけるという地味な練習に明け暮れた。守って守って、ワンチャンスを生かす、点を取られないサッカーをやり抜くという方法であった。

 

ほぼ全員がディフェンスにまわり、残した3名でカウンターを狙う典型的なスタイルをとった。いや、取らざるを得なかった。ボールの支配率が低すぎるし、相手のノートラップパスに対して、日本はワントラップ。個人技では明らかに劣っていたと思えるから、囲み込んでパスコースを遮って、奪うか、クリアするしかなかった。その為には絶えず守備ゾーンを確立するために動き回れる体力が要求されたのである。このスタイルは、サッカーをしていないという意味で「アンチフットボール」と揶揄されたりもするが、いかにして負けないかという点で柔道の試合を思い出す。腰をひいて腕を突っ張り、まともな組み手をせずに、レスリングの試合もどきのタックルなどの奇襲で「有効」を狙って判定勝ちを意図するやり方である。サッカーで日本は柔道の逆バージョンで行くしか予選突破さえ出来なかったと見るべきであろう。幸いなことに、アタッカーにビッグマウスの本田がいたことも大きい。常に前向き、そして技術も欧米選手とタメをはれる。一歩前への思いの人に「運」は回ってくると聞いたが、これは言い得て妙である。勝利の女神は何の努力もしないところへは決して微笑まないのは当然だが、たとえ努力をしたからといっても相手も努力をしているのである。当然団体競技は、天、地、人の運気をいかすべき差配の出来る監督の存在は極めて大きい。最後は人の資質にかかる。正当な努力せずして花は咲かない。


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今月の課題