夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「手帳の奨め」  編集主幹 松原 清

 新年おめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。


 光陰矢の如しというが、本当に時が過ぎるのは早い。事務所を三宮に移して丸一年、この全美の仕事を引き継いで26年目、そして私は当たり年で還暦を迎える。「よくぞここまで来たものよ」と感慨深いが、果たして昨年は何をしたのか、改めて思い出してみようと思っても案外思い出せないものである。


 そんな時、手帳をとりだしてパラパラとめくってみると、その月々の予定が記入してあれば、たとえ一年近く経ていても思い出すことが出来るから不思議である。予定の横に誰々と会った等のメモがあれば、尚鮮明にその時の情景が浮かぶ。


 私も仕事柄、毎年手帳を使っているが、以前は「日展手帳」を愛用していた。日展の役員・会員の名簿が載っていて、その年度の改選役職がひと目で分かるからで、弊紙でも約200名を越える会員以上の先生方とのおつきあいがある為、役職を間違えるミスのないように予防もしていた訳であった。大きさも適当で割合使い勝手が良く、日展会場でも千円で購入することが出来た。それが、例の個人情報保護に関する法律(2005年4月1日施行)の拡大解釈で日展手帳は入選者以外には手に入らないこととなった。

 

本来この法律が必要となった背景には、名簿の不正入手による振込め詐欺や誕生日を見越したダイレクトメールの送付や悪徳商法を規制するために制定されたもので、法にいう「個人情報データベース等」とは、個人情報を含む情報の集合物を指し、コンピューターに入力し検索可能であるか、目次、索引などを有し検索が容易である事などが要件となっている。また、個人情報データベース等での取り扱い個人の総数が5000人以下の事業者については、法律の個人情報取扱事業者の適用除外となるため、この法律の規制は及ばない。話が脱線してしまったが、この法律の拡大解釈のため、本来多くの人に知ってもらうファンとの疎通、また斯界の流通にのる手段としての名簿が日展ばかりか多くの団体図録から消えかけている。低迷する経済と、ダブルパンチで美術流通阻害に自ら拍車をかけているようである。


 で、私の手元には2006年迄の日展手帳が日記代わりとして残っている。それ以降は種々の手帳を使っているが、昨年の8月、電車で手帳を落としてしまった。偶然4月より会社で作業記録をノートに付け出していたので一部回復したが、新年から3月末までの消失感は否めない。最近は携帯電話に予定を入れている人が多い。便利だが、これも考えものだ。水に浸かろうものなら一発でデータ消失。私はアナログの手帳をお奨めしたい。手帳は全体の流れがひと目でわかる。「明日は何があるか」前の夜に確かめるついでに、一ヶ月先の予定を考える。いくらかは脳の刺激になると思う。ボケにならない最大の方法は「思い出すこと」らしい。手帳をもとに日記をつけられば最高だが、先ずは手帳の完全攻略を目指したい。


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