夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「18年振りの北欧」  編集主幹 松原 清

 今年1月に、熊谷の八木橋百貨店で中島由夫の大個展が開催されたが、その折り、ヘルシンボルグ・ラウスの自宅(陶芸工房、アトリエ、ギャラリーを構える)の横に中島由夫美術館が完成しオープンするという話を伺った。5月28日がオープニングなので都合をつけて是非来て欲しいとのお誘いを受けた。月末は弊紙の締め切りとバッティングするため、到底無理かなと思っていたが、開館後にゆっくりと訪問させていただくのも良いのではと考え直し決行を決めたのは4月に入ってからのことであった。というのも、息子がまだ中学2年の時(18年前、先月号編集後記に15年前と記したが誤り)に中島一家からのお誘いでスウェーデンのアトリエを訪問し、北欧各国を巡る二人旅の拠点として随分とお世話になった経緯があり、今度は妻を連れて来たいですねと言ったか、言わなかったとか。もちろん、中島由夫の仕事の再検証が主目的だが、これまで全美の縁の下の支えとして頑張ってきた妻への約束を果そうという気持ち、それとここ5年ほどヨーロッパ事情から離れていた私自身のガス抜きも大いにあった。
 早速、北欧への飛行機のチケットを手配。あれこれ検討してヘルシンキからコペンハーゲンに入るフィンランド航空に決めたが、最近の格安競争で随分と安くなっていて空港税、燃料サーチャージ、手配料を入れても一人13万円ほどで北欧を往復できる。

 

それに1万円追加すればストップオーバー制度があり、ヨーロッパ各都市(2ヶ所なら2万円)に足を延ばせると聞いたが、今回も中島氏の自宅を拠点として北欧に限定(オスロ、ベルゲン、ストックホルム、コペンハーゲン)し、小旅行の手配を中島氏の息子さんで中島由夫コーディネイト・ディレクターとして活躍しているアンデス氏にお願いして万事手配を終えたのが5月中旬。兎に角7月号の編集と発送準備を5月末までに終わらそうと仕事を始めた矢先に大きな問題が発生したのである。
 それは生死を伴う手術を2度実施する必要があるという父の緊急入院であった。その1回目の手術が旅行の最中に行われることが決まったからだ。もちろん旅行を中止すべきだろう。父が最初に倒れてから25年が経つが、以降ICUに入る手術を6度も経験している。その都度奇跡的な生命力で克服してきたが、ずっと看病を続けてきた母と近所に住まいする妹夫婦の世話に甘えてきた私としては、悩んだ末にそれ以外の結論はないと思っていた。が、「行ってきたら」との妹の一言で、最悪の場合には、その時点で以降の旅程をキャンセルして即帰国すると決めた。出発の前日、父の顔を見に帰省しとんぼ返り。様々な思いを胸に6月3日関空午前10時55分発のフィンランド航空AY078便に乗り込んだ。
 ヘルシンキ15時10分、6時間の時差だから10時間15分のフライト。50分の乗り継ぎ待ち後、1時間半程のフライトでコペンハーゲン空港に到着した。そこで第1回目のトラブル発生。(続)


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