夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「18年振りの北欧V」  編集主幹 松原 清

 2003年の爆破事件は、恐らくアメリカ同時多発テロ2001年の9・11を意識した犯行であろう。デンマークはイラク、アフガンに軍隊を派遣しており、これまで事件絡みのあった「人魚の像」のテロ効果を狙ったものと思えるからだ。しかし、一番はじめの首切り事件は、実は芸術パフォーマンス(コブラ表現主義)によるものだという公然とした噂がある。すでにアスカー・ヨルンの弟のヨルゲン・ナッシュが中心となって実行したとのウィキペディア(ネットフリー百科事典)の記載もあり、もうとっくに時効なのだが、これだけ騒がれた彫像は希有で、私たちが訪れた時も人人人のカメラの放列にあった。二回目以降腕もぎまでは愉快犯の犯行と思われるが、デンマーク政府が最初の事件に蓋をしているのは、時効という法律上のこともあるが、「人魚の像」が、これだけ観光のメッカとなったきっかけを作ったと思っているからかもしれないなんて一瞬思ったものだった。パフォーマンスの及ぼす人間心理の拡大である。中島由夫芸術に対する最大の理解者であり、友人であったヨルゲン・ナッシュ。その中島由夫氏はこのことに多くは語らないが、氏の案内で「人魚の像」を見るのも感慨深いものがあった。 その後、私たちはデンマークを海岸線沿いに北上、18年まえに訪れたルイジアナ現代美術館(箱根彫刻の森美術館の設計模範となった)をパスして、北部の公立美術館で開催中の中島氏の個展(Love is all)を見て、ハムレットの舞台となったクロンボー城に立ち寄り、その近くにあるヨーテボリのフェリー乗り場から海路20分、スウェーデンのヘルシンボルグへと渡った。

 

そこから氏の美術館(陶器工場、住居、アトリエを持つ)までは車で約40分の距離でる。その美術館の概要は今年の8月号で紹介させていただいているので省略させていただくが、5月28日のオープンセレモニーに日本から参加していた写真家の野辺修司氏と映画監督の婦人で染・織作家の子安多江子さんを紹介され、庭で歓迎の小宴を開いてもらった。彼らはストックホルムへの小旅行を終えて帰ってきたところであった。今年スウェーデンは5月の始めには凄い雨模様であったが、6月から好天が続いていると聞いた。時間は9時を廻っていたが、スカイブルーの空は高く、清々しい最高の気分で美味いチーズと新鮮な海老に舌鼓、中島氏は在スウェーデン45年の出来事、そして息子と訪れた18年前のことを延々と語り、小宴は盛り上がった。

  翌朝、5月28日のオープニングパフォーマンスの再現をしていただいた。東日本大震災へのレクイエムがテーマ。崩壊した大地、津波で亡くなった人々への献花で始まり、鎮魂の手作りの像数百体が花とともにあった。その後も像は造り続けて8月に2万6千体に至ったとお聞きした。

 その後ヘルシンボリ郊外へ、アンデス君の運転で案内された。大きな風車のある田舎道、海岸線に出ると多くの人々が遊泳、甲羅干しをゆったりと楽しんでいる。  続く


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今月の課題