夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「18年振りの北欧W」  編集主幹 松原 清

 二日間、中島氏の美術館兼自宅でお世話になり、私と妻はオスロ、ベルゲン、ストックホルム、コペンハーゲンと巡る旅人となった。


 大きなスーツケースは、アンデス君が帰国前のコペンのホテルに届けて頂けることとなったので、随分と楽な荷物での移動ができて感謝、感謝。以前オスロへは豪華客船の北海クルーズ行だったが、ヨーテボリ経由が廃止されたとのことで、列車で一路オスロへ向かう。所要時間は7時間余り。


 オスロ中央駅は大きく様変りしていた。今も近代的設備に改装中で、私たちは二日間地下鉄、トラム(路面電車)とバスが乗り放題のオスロカードを購入、タクシーでなく、トラムでホテルへ向った。乗り方を忘れていたけど、見様見まねで何とかなるものである。


 翌早朝、ムンク美術館へと向う。地図で見るとホテルから1.5キロ程なので、散歩がてらに歩く。美術館は、植物園や動物学博物館と共に大きな森の一角にあり、昨夜の雨に木々の緑が一層映えて輝いている。実は、この旅のひとつの目的が、ムンク美術館とオスロ国立美術館にあるムンクの代表作品、ふたつの「叫び」とふたつの「マドンナ」の再見にあった。開館にはまだ20分ほどあったが、地元の小学生が30人程先生に引率されて待っている。入口もそうだが、中に入って驚いた。美術館の印象が18年前と明らかに違うのだ。2004年武装覆面強盗事件があり、「叫び」が強奪されたことを記憶されている方もあるだろう。それで大改修工事がなされ、セキュリティーが厳重になったと後で知って納得したが、ムンクの「叫び」と「マドンナ」に再会を果たし、その2点を中心に、先年神戸で開催された「フリーズ・オブ・ライフ(生命のフリーズ)」の作品群をじっくりと再堪能した。

 

それにしても、18年前、美術の教科書にも載っている「叫び」は一点しか存在しないと思い込んで、次のオスロ国立美術館で新たにもう一点の「叫び」に遭遇した時の驚きを今更に思い出す。先ほど並んでいた小学生が作品の前で車座になり、熱心に先生の説明を聞き入っている。言葉は全く分からない。現実と違う色と形をどのように解説しているか無性に気になった。


 次に訪れたのはオスロ国立美術館。王宮の前の通りに国立劇場、オスロ大学、歴史博物館と主要な建物が近接しているが、歴博に通りを隔てて国立美術館がある。その入口の手前に、男性が愛おしく女性を抱くブロンズ像が素晴らしく、しばらく見入ってしまった。後で知ったが、作者は石彫公園の「モノリッテン(121人の人物像の浮彫、14メートル)」等212点をひとりで制作したグスタフ・ヴィーゲランであった。


 ここでのお目当ては、もちろんムンクの部屋。「叫び」と「マドンナ」とも同じ部屋にあった。実際には「叫び」はパステル画(ムンク美術館)と個人蔵を含め4点あると言うが、両館の油彩が代表する。よく見ると、完成度は国立美術館の方が高い。が、エネルギッシュなのはムンク美術館の作品だ。  

 

 つづく


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