夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「新年に思う」  編集主幹 松原 清

 新年おめでとうございます。本年もよろしくおねがい申し上げます。
 昨年は、3月11日以降本当に辛い年となりました。まだまだ被災地では、生活の見通しのつかない方々が大勢おられます。原発事故も多分に人災的な要素が浮彫になってきました。政府は的確な復旧対策をいまだに出せず、政党間の小競り合いに終始するばかり。いったい誰のための政治なのか疑いたくもなります。これが外国であれば、暴動になってもおかしくない事態です。しかし、日本人はじっと我慢をしています。そんな我慢体質にあぐらをかいて、何もせずに問題を先送りにして税金を湯水のごとく一部の人達で使ってきた官僚体制が、国ばかりか地方政治にまではびこっていたのです。平等という言葉に名を借りた不平等がまかりとおり、本当に保護が必要な人が切り捨てられる。それに反対の意を唱えても選挙に出る候補者の殆どが派閥優先の人達ばかり。投票率が50%を切るのは当たり前、政治に関心をよせない若者たちを大量に生みだしてきた文部省と教育委員会。すべてが経済優先で走ってきたつけが、自分さえ良ければいいという気質に日本人を変貌させてしまいました。それが今どっと押し寄せてきていると言ってよいでしょう。
 実は人は経済的不平等を背負って生まれているのです。大金持ちの家で生れながらに何不自由なく生活していく者、反対に貧困のどん底の家庭に生まれ、子供の時から食べる為に働かざるを得ない者。しかし、幸福は経済的に裕福な人のもとにあるとは限りません。貧しくても幸せな家族はいっぱいあると思うのです。そうしたささやかな幸せを守るのが政治の根幹であって欲しいと思うのです。

 

 政治に対する人々の思いは全く希薄になってしまったと思っていたところ、橋下徹氏を代表とする大阪維新の会が、大阪府知事選、市長選のダブル選挙で完全勝利を収めました。民主・自民相乗りの対立候補を破った意味するところは大きいでしょう。しかし、橋下氏も政策としては大阪経済の建て直しが主眼で、大阪市立近代美術館の建設を見送る方針だと聞きます。先ずは経済というのも分からなくはありませんが、美術、文化行政はしばらく低迷が続きそうです。 さて、筆者も昨年60歳となり、還暦を迎えました。従耳の年ですが、世間のありように反発を感じないだけの心の余裕をまだ持ちえません。昨年末、還暦仲間5人で「還展」という小展覧会を神戸で開催しましたが、いざ開催となると気恥ずかしさで一杯。知人や親しい先生方、東京からもわざわざ来神いただいたり、お花も頂戴しました。感謝、感謝です。オフシャルに見られる側にまわり、思いも一入でありました。
 昨年の年末に決定した今年の漢字は、1位が「絆」。震災復興の絆の大切さからと思いますが、なでしこジャパンの劇的な勝利、世界一も思い出します。チーム、仲間の絆の大切を。今年、素晴らしい人々の絆が繋がり、広がりますよう。明日への希望を込めて。


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