夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「文化予算」  編集主幹 松原 清

 平成24年度の国家予算の政府暫定予算案が、3月30日にやっと通った。東日本大震災・福島原発事故の復旧にかかる予算執行を最優先して大至急にとりかかるべきと国民の誰もが思っていると思うが、全責任を一身に受けて取り組む政治家がいない。何とも歯がゆく、あきれ返るほどの政治不在が続いている。この国には危機管理という言葉が欠落してしまったようである。先の北朝鮮の弾道弾実験の時も莫大な予算を注ぎ込んだJ-Alert(全国瞬時警報システム)は作動せず、アメリカの早期警戒衛星からの情報が直後に流れたにもかかわらず、日本国民に知らされたのは発射後46分経ってからだった。発射後すぐに爆発した為。展開していたイージス艦や地上レーダに捉えられなかったという理由はあるが、衛星が捉えた情報を扱う人の危機管理のなさに憤慨せざるを得ない。一時が万事というが、正にそのような状態が続いている。
 さて、気になる文化予算関連を見てみよう。国の一般会計総額90兆3339憶円に対して文化庁予算1074憶4700万円で、0.119%の比率である。ちなみに、各国の比率はフランスと韓国が日本の7倍程で高く、逆にアメリカは0.03%と殆ど国家予算に組み入れていない。これは州独自の管轄や美術館運営に機構の違いに起因するもので、企業・民間からの寄付が運営費の大半を占めると聞く。作家個人も如何にスポンサーを得るかが鍵であり、アメリカンドリームを支える根本となっているようだ。

 

 しかし、文化的遺産を持つ国は、国として相応の予算化を余儀なくされる。日本、韓国、フランス他欧州などがそうだが、日本は文化財の保存、活用・継承に約457.4憶円(43%)、文化芸術の発信・国際文化交流に約426.9億円(40%)、文化芸術創造・人材育成に約145.2億円(13.5%)、復興特別会計約42.4億円が組み込まれている。世界に誇れる日本の各文化財を維持・発展させていくには直接的な保全費用は必要不可欠であるが、我が国の文化予算としてこの額が適正かといえば、明らかに少ないといえるだろう。経済が成り立ってこそ、文化・芸術があると信じて疑わない為政者が圧倒的に多いことがそもそも問題だが、経済と文化は両輪であるという為政者の意識の向上がなければ形だけの文化予算(役所が何が重要で、何を切り詰めるか分かっていない)が今後もまかり通ることとなる。
 しかし、文化・芸術に係わる予算は国だけではない。県や市、町の予算の方が、地方団体や個々の作家には影響が大きいかもしれない。かつて、県や市は他県に負けじと県立美術館、市立美術館を建築してきたが、予算不足で収蔵作品の購入は進まず、巡回の企画館か団体公募の貸館なのか中途半端な運用になっている処が多い。実際に県、市レベルで美術館、貸館にどれだけの要望があるのかアンケートをとる必要があるだろう。文化発信の拠点として何をどうするか、何が求められているのか、を実践することが重要なのではあるまいか。最後は携る人の資質だ。心のゆとりを取り戻したい。


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今月の課題