夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「「公募団体ベストセレクション」に思う」  編集主幹 松原 清

 2年間の修復工事が終わり、4月にリニューアルオープンした東京都美術館での各公募展が華やかに開催されているが、このリニューアルオープンを機に、「公募展発祥の地」としての歴史の継承と発展を図るため、「公募団体ベストセレクション」展がスタートした。もともと公募団体の成り立ちは、芸術に対する主義・主張、理念・哲学の違いで諸々の団体へ分岐していった経緯を持つが、きれい事で済まされない政界に似た権力闘争がからんだ事例も多くある。しかし、そうした思想を異にする複数の団体が一堂に会し、作品での主張を一会場で見られることは美術ファンに相対的な良い刺激を供することとなり、各団体のライバル意識を盛り上げ、ひいては公募展活性化への起爆剤になると思われる。が、問題点も多いような気がする。

 ひとつは、公募展活性化企画審査会(美術部門)なるものが決まり、そのメンバー大谷省吾(東京国立近代美術館企画課企画展室長・主任研究員)、草薙奈津子(平塚市美術館館長)、建畠晢(京都市立芸術大学学長、埼玉県立近代美術館館長)、南嶌宏(女子美術大学教授)4名の委員が、油彩画、彫刻、版画、工芸、水彩画、日本画に絞って27団体を選定されたとあるが、委員の選定そのものを含め、団体選定基準が残念ながら示されていない。
 

 

 ふたつ目は、人選については各団体に「公募団体の顔」ともいうべき作家を含む、「旬の作家」ということで委譲していたが、殆どの団体が重鎮・役員クラスの作品が並んだ。逆に日本美術院は公募展の顔を控えて、旬の作家のみに限定、委員会の意図するものとはならなかった。また、今回、人選から出品までの期間が短かかったこともあり、過去発表された作品展示となった。これはある意味成功したといえるが、今後も旧作発表を認めていくのかそこのところも不明である。

 三つ目は、東京都美術館でも公募展の半数近くを占める(全国規模ではもっと比率は多い)書の団体がひとつも選ばれていないことである。同じ平面芸術でも趣を異にするから書分野でのベストセレクションを別途考えているということなら、まだ納得できるが、書は美術部門には入らないと公募展活性化企画審査会委員会が判断したのであろうか。もしそうならば、これは由々しき問題である。そのことに関して、書道界からのコメントが聞こえてこないのもいささか寂しいが、日展に書が参入された経緯と意義を、日本の文化・芸術という大きな見地で考えなければならないのではないか。そう思う。

 筆者はこうした企画が都美術館だけではなく、広く全国に広がっていって欲しいと思っている。しかし、公募展の殿堂として在り続けてきた東京都美術館だからこそ適切な、かつ明瞭な企画を望みたいのである。
 はや、7月の声を聞く。秋の公募展に向け、作品制作真っ只中の作家の方も多いと思われる。猛暑の夏の予感の中、見渡せば混迷する政界、進まぬ復興、消費税と問題は山積み。


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