夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「再び絵金祭り」  編集主幹 松原 清

 書の団体は来年の1月4日から16日まで連繋展「TOKYO書2013公募団体の今」と題して東京都美術館で開催されることがわかったが、次回に詳しく報じたい。
 さて、今年の梅雨明けは7月17日で、例年より4日ほど早かった。しかし、その後もすっきりしない天気がしばらく続き、その推移が少々気掛かりであった。何故天気が気になっていたかと言うと、今年、6年前に訪れた高知赤岡町の絵金祭りに再訪する予定を立てていたからで、雨が降ると即中止となる。毎年7月の第3土日の2日間(7時〜9時)に限って絵金の芝居絵が赤岡民家の玄関口に百貫目蝋燭の灯を前に並べられるのだが、当然雨降りでは絵も痛み、汚れるし、蝋燭も灯せない。ある意味デリケートなお祭りといえる。
 美術通信のT君から、再度誘いがあり、日本南画院のK先生に再びお世話になったのだが、今回は是非見てみたいと言う妻同伴の高知行きとなった。神戸から車で約300キロ。岡山―高松の瀬戸大橋ルートで高知に入る。神戸を出たときは晴天、それが四国道で高知に差し掛かると急に雨模様となり、不安で一杯。待ち合わせの高知県立美術館に着いてからも時折通り雨が。しかし、赤岡町に到着した5時頃には曇り空に変わって、町は祭りの準備を終え人々が徐々に集まって祭りらしくなっていた。商店街に足を運び、以前は詳しく見なかった50cm大の歌舞伎絵を見て「絵金蔵」へ。

 

 「絵金に来るたびに、何か新しい発見がある」とは、K先生。色絵ではなく、絵金の墨絵素描をじっくりと見入っていた。絵金蔵の前に建つ「弁天座」をみてびっくり。6年前JAの集荷場を、冷房替わりに氷柱を所々に置いた特設の舞台として子供歌舞伎が上演されていたが、立派な芝居小屋が出来ている。今年が5周年だと聞いたが、私は6年前、最後の特設舞台を見たことになる。確かに冷暖房設備をそなえた新築の舞台で歌舞伎、浄瑠璃、落語などの演舞場として町興しの一環として捉えられるが、あの氷柱のあるむんむんとした会場の雰囲気はもはや味わえない。
 薄暗くなりかけた7時からが芝居屏風絵開陳の本番である。百貫目蝋燭の灯りに照らし出された雰囲気はまた格別で、どろどろとした情念が滲んでくる、そんな思いにかられる。と、ひとつのことが閃いた。絵金蔵に同じ絵が掛かっていた!玄関に屏風絵を出しているおやじさんに聞いた。「こっちが本物?」、「そう、1年に1度だけ里帰りして展示されるんだよ。絵金蔵の常設はコピーで、絵金祭りが終わると本物は蔵に保管される」との返事。現存する赤岡町の芝居屏風絵は22点。要は本物を見るチャンスは正に1年に4時間(2日、各2H)しかないということを改めて思った。今年は絵金の生誕200年にあたるというが、絵金祭りにも新しい動きが窺えた。若い画家が洋画、アニメなどを屏風絵として描き、ちゃっかり他の家の玄関で展示をしている。純粋なエネルギーを感じてちょっぴり嬉しい気分になった。
 


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