夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「フェルメールとツタンカーメン」  編集主幹 松原 清

 立秋(8月7日)が過ぎ、処暑(8月23日)が来ても一向に熱暑が収まらない。振り返れば、毎年同じ言葉を繰り返してきている。日本の熱帯化がいよいよ進行してきている証であろうか。
 そんな暑さの中、上野に2カ所長い行列が出来ている。ひとつは東京都美術館の「マウリッツハイス美術館展 : オランダ・フランドル絵画の至宝」、もうひとつは上野の森美術館の「ツタンカーメン展 : 黄金の秘宝と少年王の真実」への入場待ち。夏休み中でもあり凄いのかなと思っていたが、そうでもない。炎天下の中老若男女が整理券をもらって延々と文句も言わず並んでいるのである。都美術館のほうは2ヶ月目の8月29日に50万人を突破、その大部分のお目当ては「真珠の耳飾りの少女」である。9月17日最終日までに70万人に迫る勢いであり、その後神戸市立博物館へと巡回(9月29日〜2013年1月6日)される。一方、大阪天保山特設会場で3月17日から4ヶ月間開催(当初6月3日までの予定を7月16日に延長)で93万3千130人という関西歴代2位の記録をつくって、上野の森美術館へ巡回されてきた「ツタンカーメン展」だが、前評判は上々で9月の前売り予定枚数は既に完売している。かつて1965年東京国立博物館で開催されたツタンカーメン展の入場者が129万人(40数日)で歴代2位の記録を達成しているが、今回は12月9日まで4ヶ月のロングラン。1ヶ月経た9月3日までの入場者数は約23万4千人というから100万人に到達する可能性は高い。しかし、館自体のキャパの関係もあり、総入場者数では東博の記録を塗り替えるのは難しいかもしれない。

 

 しかし、これは驚異的な数字である。なぜ詰め込みの館内で、人の頭しか見えない状態にかかわらず炎天下の中、並んで見たがるのか。私もこれまでに並んでも見たい展覧会はあったが、パンダの時と変わらない日本人の「俺も、私も」現象の心理が少なからず働いているようで、一斉に芸術志向が上がったわけでは決してないと思う。この機会を逃せば二度と日本で見られないというテレビ、新聞、雑誌のキャッチコピーが拍車をかける。有名、ステイタスにも弱く、自分だけが乗り遅れた気分になるからだろうか。私も、大阪でのツタンカーメン展に記者招待としてじっくりと展覧できる機会をいただいたが、前回来た「黄金のマスク」は来日しておらず、残念ながら感涙に値するには至らなかった。好み的には「真珠の耳飾りの少女」に再会したい方のひとりに入る。
 9月から院展、二科展が始まり、一水、新制作、行動、独立、二紀、そして日展と目白押しである。公募展の入場者は近年どのような推移となっているのだろうか。六本木に移った日展は徐々減で苦戦をしているし、一般展覧者を今後いかに増加させていくかということと、出品数云々とは同レベルの課題と捉えなくてはならないと思う。その2つに関して、カリスマ作家の減少が極めて大きい。作家と団体が真剣に取り組むこと意外に方法はない


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