夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「実るほど…」  編集主幹 松原 清

 早いもので、今年も11月の半ばを迎えようとしている。リーマンショック以降世界経済は逼塞状態となり、ユーロ圏の国家レベルの破綻問題にまでに発展し第2次大戦前の状況にあるとも言われている。世界警察を自認していたアメリカも依然問題は山積みで、失業率の回復に至っておらず、内政重視の政局へとチェンジしているが、大統領選でオバマかロムニーかのデッドヒートが続いている。本紙発行時には決定し、今後のアメリカの指針が決まりそうだ。オバマ続投だと、ドル安政策が続く。特に日中間の尖閣問題が横たわっており、沖縄基地、オスプレイなど安全保障条約と複雑に絡みあって、日米同盟の行く末も心配だ。
 そんな中、日本の政治は空転のまま。東日本大震災の復興は遅々として進まず、原発事故の処理と今後の方針も明確にされないまま、現内閣は保身に汲々としているとしか思われない体たらくぶりを国民にさらけ出している。解散を仄めかしながらも権力に執着する最悪のパターンである。国の借金を軽減させるというマニフェストはもはや絵に描いた餅で、国債の発行は止まりそうになく、1千兆円の借金を負うまでになっている。
 我々には何が出きるのであろう。ただ政治家を選挙で選ぶしか道はないのだろうか。今は試練の時かもしれない。世界に、そして日本にも人格者が欠如しているからだ。まるで陣取りゲームのような感覚で、自国の利益しか見ていないし、自己権力の保身で政策が決まっていく。

 

結局政治、経済に携る人の資質に収斂されるのであろう。お金でお金を買う規制のないデリバティブも世界経済安定に非常な外乱を及ぼしている。もはや1国だけが安定出きるような経済、外交の仕組みはない。いろいろな思惑が絡みあって世界が動いているからだ。
 果たして維新の会、石原新党は政党として機能するのであろうか、新年明けには総選挙が恐らく控えている。消費税も2年後4月から8%になり、その翌年10月に10%になる。どさくさに実施時期だけが決まっているが、その運用、税対象、税の使用方法はまだ明瞭になっていない。ますます生活にしわ寄せがくることは確実で、文化的行事や芸術の充実に支障がでないよう配慮して欲しいものである。
 古来、戦争中であれ、逼迫した経済状況であれ、画家は絵を描き、音楽家は演奏会を催してきた。芸術に携る者は、自分が生きる証としてその仕事を全うしてきたのである。せめて、こんな時代だからこそ、人間本来の生き様を貫きたいものである。芸術の世界にもヒエラルキーがあり、ピラミッド構成をつくっているが、その頂きにある指導者は少なくとも、あの人は人間的にも立派な人であったと後世に語り継がれるような人、惜しまれる人であって欲しいと思う。
 「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」、言い古された言葉だが、心底このことわざの重みを感じる今日この頃である。
もう一句、「おじぎする心や高し 百合の花」。


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今月の課題