夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「2020年東京五輪開催決まる」  編集主幹 松原 清

 9月7日午後5時、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会の総会で、2020年夏季五輪・パラリンピックの開催都市に東京が選ばれた。私はその日の午前中、取材で大阪に向った駅での号外でこのことを知ったのだが、日本時間では8日の午前5時であったから、プレゼンからテレビ放送にかじりついていた人達は恐らく眠い1日を過ごしたと思われる。東京に決定と聞いて、心がわくわくしなかったと言えば嘘になる。私もやっぱり日本人、舞い上がる気持ちを押さえながらも、中学1年のとき見た東京五輪のテレビと後の映画の映像記憶がフラッシュバックしたのも事実である。あの東京五輪を契機として、日本は著しい経済発展を遂げた。東海道新幹線の開通、首都高速道路も整備され、首都東京は大きく変わって世界の東京の地位を得たのである。経済効果云々の話題が沸騰しているが、今の世界状況の中、二匹目のどぜうが確実にいるのかどうかはわからない。
 さて、改めて五輪招致の難しさを思い知ったのも今回であった。88年大会の夏季五輪に名古屋が立候補して、ソウルとの一騎打ちに敗れた時も、その後の98年長野冬季五輪が決定した時も、招致の舞台裏をほとんど知らなかったし、招致委員会も活動をオープンにしていなかった。08年の夏季五輪に大阪が立候補して、北京に破れたころから、ロビー活動云々が囁かれだしたように思う。16年夏季五輪に、石原都知事の肝いりで立候補した09年の招致活動はまさに空回りで、政権交代前年の年とは言えど政府、皇室の関与を感じない東京の自作自演に終わった感があった。

 

 そうした多くの失敗の経験がこの招致活動を大きく変えたと言えよう。アスリート、知識人をフルに活用したロビー活動、そして印象に残るプレゼンはIOC委員の称賛を受けたことは記憶に残るできごとであった。
「お も て な し」は今年の流行語大賞候補に上がるであろう。
 今回候補地として選考に残っていたのは、マドリード、イスタンブールと東京の3都市で、1回目の予備投票で東京は大差で1位通過。マドリード、イスタンブールの再投票でマドリードが脱落。そして決選投票で東京は60票を獲得、36票のイスタンブールを大差で破り、日本での2度目の夏季五輪が2020年7月24日〜8月9日まで開催される。
 先に述べたプレゼンで、最も魅力的な開催計画を東京は用意した。「アスリートファースト(選手第一)」を旗印に、33会場のうち85%にあたる28会場を選手村から半径8キロ圏内に配置するというもの。また、すべての観客を鉄道網を中心とした公共交通機関で輸送。大会中は24時間運行される。
 しかし、どうしても気になるのは原発問題である。あれだけ首相がプレゼン会場で世界に約束した以上、すみやかな対処が不可欠であろう。懸案だった日本のお家芸レスリングも復活した。熱しやすく冷めやすい日本人だが、きっちりと7年後を見据えたい 。


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