夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「慌ただしさの中での考察」  編集主幹 松原 清

 言い古された言葉だが、「光陰矢の如し」で2013年も11月半ばとなる。昨年暮の衆議院総選挙の自民圧勝で政権交代となり、第二次安倍晋三内閣が誕生。選挙前の公約として掲げたアベノミクス(諸々の経済政策)は今年どの程度実現したであろうか。円高は少し解消されて1ドル80円台だった昨年に比べ約100円になったが、経済成長率3%以上の目標は1・95%で昨年とほぼ同一である。一般大衆で言えば、金回りは相変わらず悪く、外国へも旅行に行きにくいというところか。
 日本経済再生では、首相自らが原発の海外輸出に力を入れており、これは福島原発事故と絡み時期的に、また信義的に問題と思える。メタンハイドレードやレアアース泥など海洋資源の開発は、一時期盛り上がりをみせたが、今どうなっているのだろう。7月の参議院選挙でも自民圧勝で、過半数を上回る135議席となり、衆参のねじれが解消したことで決定はスムーズとなるが、真の意味で日本を正常化してくれるのか、期待と不安相半が正直な気持ちである。
 また、一番の祝事として2020年の夏季五輪招致で東京が決まったことが挙げられるが、その折り、安倍首相が世界に向けて公約した原発事故汚染の解決は、日本の信義がかかる問題である。前記の原発輸出の件と密接にリンクしているが、3・11の被災地、被災者問題とも合わせ最大限に、大至急取り組まなくてはならない。復興予算もそうだが、全国から、また世界から贈られた支援金はどこに行ってしまったのだろう。

 

 さて、美術界に話題を移そう。改装なった都美術館も、ベストセレクションなど新しい企画を加味しながら無難に回り始めたが、1年8ヶ月が経過して思うことの一つに会場の広さが陳列数にマッチしていない会が多いことがある。三段掛けでぎゅうぎゅう詰めの会、一方はスキマスペースだらけの会。これは見直し時に是非とも考えて欲しいものである。
 次に、話題の展覧会を挙げる。今年も海外から多くの作品が日本にやってきたが、作家個人名をタイトルにした展覧会が目立った。先ずは国立西洋美術館で開催された3月の「ラファエロ展」、4月には東京都美術館で「レオナルド・ダ・ビンチ展」、そして9月からの国立西洋美術館での「ミケランジェロ展」と、ルネサンスの三大巨匠の揃い踏みは初めてのこと。他、国立新美術館で3月から開催された「フランシスコ・ベーコン展」、東京都美術館で12・18まで開催中の「ターナー展」がベスト5に入るだろう。
 そして、晴天の霹靂の如く第45回日展の開催に合わせて記載された朝日新聞の1面記事である。4年前の書部門(篆刻)で審査に不正があったという内用であった。それにしても、この時期を狙って、北京のテロ記事よりも大きく扱った朝日新聞、本来なら週刊誌ネタの内容であり、奥に明らかな意図が感じられる。日展は第三者を交えて調査を実施しているとのこと。その結果を待ちたい。
 あと今年もわずか、悔いのないよう頑張りたい。


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