夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「憂いの中から見えるものは」  編集主幹 松原 清

 新年明けましておめでとうございます。
 慌ただしく急変する世界情勢(アジア)、何かきな臭いものを感じてそら恐ろしくなりますが、世界が、そして日本が、暮らす人々が平安な1年となりますよう祈年いたします。
 思い起こせば、2013年は悲喜こもごもで、1月、桜宮高校バスケ部顧問のいじめによる2年生キャプテンの自殺報道にはじまり、ボーイング社の787型機でバッテリートラブルの続出に唖然。アルジェリアの人質事件もあった。プラントメーカー日揮の社員10名が死亡している。柔道界でも暴力問題が浮上、日本オリンピック委員会に影を落して監督辞任、3月に助成金不正受給の不祥事が発覚して会長が辞任する騒ぎがあった。また、元横綱の大鵬が死去(1月)、10月にはアンパンマンのやなせたかし、打撃の神様と呼ばれ、巨人を日本シリーズ9連覇に導いた川上哲治、11月に歌手の島倉千代子も亡くなった。美術界では、1月に日本選抜美術家協会を設立した永森信一郎と安井賞画家の堀江優が死去、6月には彫刻家の三坂制、人間国宝の十四代酒井田柿右衛門、7月に藝術院会員の平松譲、8月に洋画家の根岸秀雄、日本画の稲本実、10月に洋画家の堂本尚郎と村山密、書家の鈴木景堂、そして11月に書家の法元康州、駒.成峰と洋画の加藤英正が亡くなっている。人は生まれた瞬間から死に向かって歩み続ける。「如何に死ぬか」を考えると、自然に「如何に生き抜くか」に行き着く。先達の御霊の安らかならんことを願いつつ、自らの生の証を刻もうと思う。

 

 さて、政財界に視点を移すと、年明けからのアベノミクスの連呼。1月末にデフレ脱却に向け2%のインフレを目標設定した。確かに年間を通すと値上がり感がするが、景気が良くなったのは自動車、電気など輸出関連と政府の庇護のもとにある銀行、証券業界くらいのもので豊かさはまだまだ実感できるほどでない。政府は強気でTPP交渉参加を表明、これもねじれ国会がなくなった産物で、消費税も今年4月から8%に引き上げが決定して、低所得者層への負担増は決定的である。国の借金が1000兆円を突破したが、消費税アップで本当に対応できるのであろうか。3・11の負の遺産となった福島原発の汚染水漏れは深刻だが、あの大量の汚染水を最終的にどう処理をするのだろうか。また、昨年は異常気象が多発した。特に夏の台風は大型化して風速70メートルを超えるものが列島を襲う予兆が生まれている。フィリピンの被害の大きさを見ても明らかで、日本は亞熱帯化現象で竜巻被害も深刻となってくる。
 しかし、少し良いこともあった。先ず、2020年の東京五輪招致が決定したこと。富士山が世界遺産に登録されたこと。プロ野球の楽天の優勝とマー君の公式戦30連勝の大記録、12年ぶりの新型ロケット「イプシロン」の打ち上げ成功も。
 が、きな臭い防空識別圏に特定秘密保護法。最後の最後で日展問題。日本の文化が危うくなっている。次号で考察したいと思う。


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今月の課題