夢遥  ゆめはるか

(全日本美術『今月の課題』1996〜2005年を単行本に)
全日本美術編集主幹 松原清 著  A5版 272頁 定価2000円

今月の課題 「24 年振りのフィレンツェ…そしてパリ(1)」  編集主幹 松原 清

 日展問題で揺れている現状に、いささか辟易した心のわだかまりがあるのは私だけではあるまい。なぜ芸術の問題を事件扱いにしか捉えられないのか、本来文化を育てる使命がある新聞の深慮のなさをつくづく思うが、そうした意味に於て「日本の文化とは」というタイトルで3月号から記し始めたが、しばし中休みを頂いて(但し、15面で少し関連した考えを述べた)、この2 月に訪れたフィレンツェ・パリの取材記事を記す節操のなさをお許しいただきたい。
 さて、話しは2011年の5月へと遡る。そう、ポルトガル・ギリシャの経済破綻でユーロが100円を切るほどになっていた時、この機会にヨーロッパに足を伸ばそうとちょっと多めに両替しておいたのだが、中島由夫美術館オープンでユーロの通じない北欧を訪問することとなった。以降、韓国とベトナムとユーロ圏以外の国の取材が続いたため、再度訪れたいと思っていたフィレンツェへの旅を計画したのである。
 2月はヨーロッパ旅行の端境期で、航空運賃、ホテル代とも格安になるので、少々寒さを我慢さえすれば美術館巡り中心の旅として比較的気楽に行ける。とは言っても、月刊の新聞編集の合間をぬっての旅であり、期日にも限界がある。ひとつのホテルにステイして、じっくり巡りたいという同じ思いの同志6名での旅となった。あまりフィレンツェの予習も出来ずの出発となったが、前回再会するつもりで見ることが叶わなかったアイアーノの木彫の「マグダラのマリア」だけは絶対見たいとネットで調べたのだが、サンタ・トリニタ教会がどうしても出てこない。日本でフィレンツェのガイドを買ってもまったく案内がないのである。

 

 また、今回の旅には携帯のラインで無料通話が出来ると聞いていたので、仲間内で連絡が取り合えればすごく便利だと思い、その為にスマホに買い替えたのだが…。とにかく私たち6名は2月13日、12時25分発のエアーフランスAF291便に乗り込み、一路パリに向かったのである。パリまでは約11時間のフライト。そこからトランジットでフィレンツェまで約2時間である。以前はローマに入り、そこからTGVで向かったのだが、パリ・シャルルドゴール空港の乗り換えはひやひやものであった。ユーロ圏のフライトは国が違ってもおそらく国内線扱いとなっていて、そのゲートを探し当てることが非常に難しいのである。やたらと広い空港で、フライトゲート案内のディスプレイがほとんど見当たらない。1時間55分あった乗り換え時間が瞬く間にすぎていく。空港の係員を探して尋ねるしかなく、教えられたとおり空港内バスで移動するが、目的のゲートは空港の端にあり、20分もかかったのである。着いた間もなく搭乗となり、事なきを得たが、違う場所を教えられたり、勘違いして別のバスに乗ったり、バスから降りる場所を間違えたらとても間に合わなかっただろう。フィレンツェのホテル到着は現地時間22時。日本は朝6時。 続く


topページへ
今月の課題