今月の課題 梅雨時の石垣島に(2) 編集主幹 松原 清
これまで(2回)沖縄で美味しいと思える料理に出会ったことがなかった。名物のそうきそばは、粉っぽくて私の口に合わなかったし、他の料理も全体に甘くて私にはフィットしなかった。しかし、到着後に食べた八重山そばは美味しかったし、1日目の夜の、三線ライブの居酒屋「うさぎや」のもずくそうめんは珍味で、安物の現地焼酎もよく郷土料理にマッチしていた。
2日目、予定通り朝早めに川平湾に向う。多少雲はあるが、強い陽射しで肌が痛い。またもや雨の予想は大外れ。まだ引潮でなく、水量がある湾のブルーとエメラルドと珊瑚の砂浜のコントラストに思わず見とれる。早速スケッチ組は、 気に入った構図を探しイーゼルを立てて画帳を広げる。我ら便乗組3名はグラスボートに。ガイドなどでよく見知ってはいるが、実際にのるのは初めてであった。驚くほどの透明度、ガイドをする船頭曰く「深い所で15m以上あります。採食時と休んでいる時と色が変わる珊瑚もあるよ」と。珊瑚の廻りには熱帯魚が泳ぎ、潜って見たら尚感動するのかな!とひとりごちた。珊瑚の浜は裸足だと痛い。本州と同じような浜辺の海水浴はちょっと無理かなと思う一方、この透明度、だから沖合いの珊瑚礁でのシュノーケリングやダイビングの本場となっているのだ。
暑い中、スケッチ組はすでに3枚目に入った人、1枚にてこずっている人もいる。まだ描きそうなので、便乗組は一路島の最北端にある平久保岬灯台へと向う。車も少なく、快走する途中気になる看板を見つけた。
「サビチ洞」は川平から20キロほど行った海岸淵にある井原間にある鍾乳洞。3億7000万年前海底隆起で生まれ、日本で唯一海に抜ける。この時の観光客は私達のみ。珊瑚礁のなごりも残り、ひと気の全くない鍾乳洞は格好の避暑スポットとなった。昼食は鍾乳洞か少し西にある「明石食堂」で。ここの料理は本当に旨い。豚カツは柔らかくサクサクで、そば類の麺も細身で汁もコクがあった。昼はいつも行列が出きると、鍾乳洞改札のおばちゃんに奨められた店だが、平日でも車が並んでいた。最北端の平久保岬灯台は展望台の下にあり、真っ青な海に白く輝いてそのコントラストがコルシカ島のイメージに重なる。南を眺めると川平あたりを真っ黒い雲が覆っている。恐らくスコールであろう、私達はしばらく岬の光景を楽しみ、帰りに玉取崎展望台のハイビスカス園を経由して2日目の観光を終えた。
3日目最終日は高速船で竹富島に向う。約10分の距離である。その頃から少し空模様があやしくなってきたが、予定していた水牛車観光後2時間ほどは晴れていた。水牛は賢い。教えたコースを長い車を牽いて石垣にこすることなくほぼ自動運転する。その後、スケッチ(3時間程)の終わり頃、初めて強烈なスコールに合った。石垣島本島も雨だったらしく、帰りの空港までの路、滑走路も濡れていた。滞在中、尖閣諸島(石垣から170キロ)海域侵犯が2度あったと聞き、改めて今の現実を再認識した。
全日本美術『今月の課題』の
1996~2005年を単行本に
全日本美術編集主幹 松原清 著
A5版 272頁 定価2000円