今月の一点(1)  〜中野 中〜

田中 正巳

『壊れかけた太陽』

50F  和紙/アクリル・墨

 

 ことしの夏も暑かった。日本は確実に亜熱帯化しつつある。カラカラ天気に一局集中豪雨による水害や台風の頻発による災害。異常気象による自然災害は日本ばかりでなく地球規模で起こっている。
 自然が壊れると人間の心も壊れるのか、簡単に人間を殺し、わが児を虐待し、いじめが頻発する。壊れるはずのない安全神話が偽りであったことが原子炉倒壊で露呈され、放射能の恐怖は蔓延化している。

 田中正巳が「壊れかけた太陽」シリーズをはじめてすでに10年になる。当初は何とおぞましいタイトルなんだろうと訝しく思ったものだが、いま、何が起こっても不思議に思われない現代社会に、良く似合うタイトルになっている。
 このシリーズが始まったのは、ほんの偶然からであった。「父と子の季節」シリーズを10年ほど続けたあと、圧倒的な力の自然と非力な人間とを対比させる狙いで太陽と人間を対峙する「祈り」に移行した数点目、絵の中の太陽がグシャグシャになっていた。
 あっ、太陽が壊れかけている!?
 直感した。直感はしばしば偶然の衣装をまとって現れるが、それまでに心の中に醸成していた、自身にもコレと認識できていないコトやモノが、ある契きっかけ機によって明確に認識され、直感となるのだ。画家や詩人、小説家らがその鋭い感性によって、未だ明確ならざるコトを予兆し、予感する。そうした資質が創作家にするのだが、彼らは社会にさきがけて作品として確認し確信していくのであろう。
 迫り来る軍靴の高鳴りに社会不安を覚えたことも一因で、芥川龍之介が自殺したのは良く知られる。

 絶対的存在であり、私たちの生活に全能である太陽が壊れる。壊れる太陽のイメージに田中は震えたことだろう。そして現代社会の種々の問題も人間の抱える危機感がオーバーラップした。今回の個展(11・11〜16、銀座3・ゆう画廊)の3枚パネル、4枚パネルの大作は固まりつつあった画面に新たなムーヴマンと展開を試みた。まだまだ着陸点は先にある。

昭和年和歌山県生、現在北杜市在住。行動展会員。

 

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