今月の一点(2)  〜中野 中〜

古澤 洋子

『至上の楽園』

至上の楽園〜大地の宝石〜  20号

 

 3年ぶり2度目の日本橋三越本店の個展、30号から小品までの30余点の中から、「至上の楽園〜大地の宝石」(20号)を選んだ。
 古澤洋子(1968年金沢生)は89年に日春展初入選し、金沢美術工芸大学日本画専攻大学院を修了した93年、日展初入選を果たし、2003、08年特選を受賞、昨年日展新審査員を務めた。現在委嘱として活躍する気鋭である。
 タイトルに謳った〈楽園〉は、通常、苦しみのない幸せな生活ができる所、すなわちパラダイスの意だが、彼女が意図的に使う〈楽園〉とは、T生命の堆積Uである地球そのものを指し、さらに―その地表付近では、生と死を繰り返しながら綿々と継がれていく生命の連鎖がある。短い一生を煌びやかに、また愚かに、かつ賢く、そして貧しくも懸命に生きている私たち人類の奇跡もまた楽園と言えるかも知れない―と、歴史的スパンと広い視野を持って踏み込んでいる。
 真赤な大きな夕陽を背に丘陵に櫛比する家並の町のある岬は大海に浮かぶ船になり、そこから、知れぬ明日に向かって漕ぎ出す小舟たちを描いた「明日へ漕ぎ出す舟」(30号)も、地球創造以来積み重ねられて来た巨大な地層の上に建つ町並は、まるで巨大な波に翻弄される船のような「歴史の難破船」(20号)も、人類の奇跡的なT生命の連鎖Uであるならば、それはやはり〈楽園〉なのである。
 掲出の「至上の楽園〜大地の宝石〜」(20号)は画面いっぱいに円形をなして集合住宅があり、周囲には色とりどりの花に埋め尽くされている。住宅に住む何百の人々は―短い一生を煌びやかに、また愚かに、かつ賢く、そして貧しくも懸命に生きている―のだ。家族で暮らす人も老後の一人暮らしの人々もみな、短い一生を懸命にいきているのだ。夜ともなれば窓々から灯りがこぼれ、昼の花々に代わってキラ星のごとく輝くだろう。そんな日々の喜び悲しみも、苦悩も楽しみもそれぞれに抱えながら、何百年も人々は生命を紡び、つないできたのだ。それはまさに奇跡であり、上空から眺める画家の眼には″大地の宝石″のように悲しくも美しい存在なのだ。

 

今月の一点 2014〜へ 

TOPへ