樂 十四代 覚入 十五代 吉左衞門 父子展     樂美術館開館25周年記念  ■9月7日〜12月21日

晨 明   十四代  覚入

 今回開催された「はじめての親子展」は十四代 覚入が六十一歳という若さで亡くなった昭和五十五年から数えて二十三年目にあたる。

 この二十三年という年月の重みを確かに伝えながら、なおかつ懐の深い、ぬ くもりのある展示室にゆっくりと腰をかけ、二代それぞれの世界を味わった。

 父・十四代 覚入が戦地から帰った昭和二十年、既に十三代惺入は亡くなっていた。「『一子相伝とは教えないことだ。己で感じ築き上げたもののみが、また同時に伝統の本質をも知り得るのである。』。それがゼロからたった一人で作陶を始めなければならなかった父の実感でもあった。」と、十五代 吉左衛門は語っている。

 子供の頃めそめそしていると「おまえのような線の細いことでは、この家は持っていけない」と叱られ、それなら自分は父と違った感覚を持って生きていこうと思ったとも言う。

 覚入の「晨明」と吉左衛門の「吹馬」。どちらも四十四歳の年の仕事である。夜明け前の薄闇にまどろむ富士。そして「圧倒的な夜の闇」を瞬く間に駆け抜けていく馬。父子ともに芸大の彫刻科で学んだ。その後父は戦地へ赴き、子はイタリアを放浪する。日本を外から眺めるということは、楽家の歴史を眺め直すことでもあったのだろう。伝統を守るとは、存在の本質を継ぐことであると、改めて思った。  (平野)