ななこのArt interview  〜作家の小宇宙を訪ねる〜 (4)

蛭 田 二 郎

『我々が作るのは彫刻であって 人体のマネキン人形を作るんじゃないですからね』

 岡山県佐山にある彫刻家、蛭田二郎先生のアトリエを訪れた。日展理事、日彫会理事の蛭田先生は現在72歳。昭和8年に茨城県に生まれ、茨城大学教育学部を卒業後小森邦夫氏に師事した。昭和52年、ドナテッロのリアリズムに魅かれ渡欧、イタリアにおよそ2カ月程滞在して自身の彫刻の方向をさらに深めた。平成8年文部大臣賞受賞、そして平成13年度には日本芸術院賞を受賞されている。  
  部屋に入って驚いた。ズラリと並べられたCD、大きなスピーカー。奥様が音楽の教員をしていたことで影響を受け、以来ショパン等クラシック音楽を聞きながら制作されているのだという。「音楽の詩情、美しさに心が解放されます。制作は孤独ですからね、孤独に耐えるっていうか。音楽を聞くことで自分を励ます事も出来ますし、やっぱり音楽はいいです。」今はやりの音楽については「ガチャガチャしたのは体質に合わないのであまり聞きません。偏っているかもしれないけど、作家は偏ってていいと思うんです。」と自分なりのこだわりを持つことに誇りを持っておられる。音楽が人の心に何かを訴えかけて残すものであるように、彫刻もそうでありたいと願う先生の言葉が胸に響いた。





第9回日展特選「ひとり」

 「人体の彫刻は誰が見ても肉体のフォルムの出来不出来が分かる。また、人物としての感情表現がストレートに感じられるものです。作者の表現メッセージをいかに彫刻に込めるかということについて、人物表現が一番深くて難しい。だから私は人体をモチーフに作るんです。我々が作るのは彫刻であって人体のマネキン人形を作るんじゃないですからね。そういう意味では私の尊敬しているリューメンシュナイダーなどの彫刻家が、神と人間を繋ぐ中間存在を表現しているところは具象彫刻そのものの本質であると思います。」蛭田先生の作品は内実的表現の趣があるが、その内実は人間の感情表現を追求した末のリアリズムなのだということが理解できる。今後の制作については「私は自分の内触覚性にこだわって制作しています。これからも自分の内なるものに導かれるまま制作していこうと思います。」と語った。
 最後に蛭田先生は最近まで大学で教授をしておられたが、その時に出会った若い人に対してどんな思いをお持ちだったのかを尋ねた。「今時の若者は…と表現されるような人は一人もいませんでした。皆才能豊かですばらしかったですよ。様々な子供達と触れ合ってきたけど、そういう経験が彫刻にも活きているように思います。しかし今の時代自由がありあまっているように見えて、その実、社会的な枠が決められている。行動の自由度が非常に狭くなっている感じがあって不憫にも思います。こういう時代に負けないで頑張っていって欲しいですね。」とのメッセージを頂いた。滋味ある言葉であった。

 



蛭田先生のアトリエ