ななこのArt interview  〜作家の小宇宙を訪ねる〜 (8)

山 本 眞 輔

『感動は理屈じゃないんですよね』

 日展理事、日彫会理事の彫刻家、山本眞輔先生を訪ねた。山本先生は1939年愛知県に生まれ、62年日展初入選、63年東京教育大学彫塑専攻科卒業、72年日展特選、99年内閣総理大臣賞受賞、そして2004年には日本芸術院賞を受賞された。現在は「自分の仕事の充実はもちろんですが、これから勉強していく若い人達に何か役にたてることはないか、という思いを持っています。」と、次代の日本の彫刻界を担うであろう若い人達の為に力を尽くそうとしておられる。  山本先生は独自の清涼感のあるロマンと格調の高い女性像を多く制作されているが、まずはその世界観を確立するまでの経緯をお聞きした。「彫塑をしようと大学に入った。勉強していくうちに、現代イタリア彫刻に出会い、自分の方向は具象表現しかないと思うようになった。」祖父は書家、父は画家という芸術をいつも身近に感じる家庭で育ったことが、しっかりとしたビジョンを持ち、彫刻の世界に足を踏み入れるに至ったのであろう。その後1968年にイタリアへ政府招待留学、1984年文部省派遣在外研究員として再訪。「民俗の血や歴史から作品には決定的な違いがでる。先人の真似をしていてはそれを越えることは出来ない。それに誰かの作品を真似するというのはその人が目標になってしまって、その人以上の仕事はできないものなのだ、それがヨーロッパで勉強して一番強く感じたことでした。また、今まで多くの作品をみましたが、その中で時代の流れ、例えば土に埋もれてようが、海の中にあろうがどこにあろうが、とにかく気の遠くなるような時代の流れの洗礼、各時代の人の目の洗礼を受け、未だ今日に残っているものは凄かった。感動は理屈じゃないんですよね。」

 

 



第30回日展出品作品「大愛」

 また、山本先生は心の旅シリーズを長期にわたって制作されていることから、やはり海外旅行に行くことも多いという。「高校の時から英語は好きで勉強していましたし、イタリアに留学していたことからイタリア語も話せます。大体どこへ行っても言葉は通 じるので世界20カ国以上は行きました。彫刻家というのは旅行中は画家みたいに風景をスケッチしたりできないから自分の心をスケッチ、メモするんです。遺跡の所に女の子が腰を下ろしているような、そんな風景を見るとフッとイメージがふくらんだりします。私はあくまで一番最初のイメージを大切にしていますから。そうした歴史背景を感じさせる土地での何気ない出会いが作品に繋がっていくのです。」山本先生にとって旅行は制作のモチベーションを高める最良の手段といえるのであろう。その作品には訪れた場所で感じた空気、匂い、音等が込められているのだ。  彫刻に対して精力的に語られた先生だが、以前大病を経験したとお聞きした。これからも健康な身体で制作ができ、自分にとって納得いく作品ができたらうれしいと語った山本先生。最後に若者へのメッセージをお願いした。「芸術へのアプローチは一定でなく、何でもありです。あらゆる表現方法を試行することができます。若い人達にはそうした自由さを持って幅広く彫刻の世界を切り開いて欲しいと思います。」

 




イメージデッサンの一枚