第35回日展より

日本画     大山忠作 

 3年の情勢は、経済も政治も暗く重たいものであった。イラクではテロが多発し、ついに二人の日本人外交官がテロの標的にあって亡くなった。フセイン元大統領がやっと拘束されたが、それでも日本の自衛隊派遣問題が現実としてある。
 国内もまた然りで、年金問題ほか足利銀行の破綻等良い話題が極めて少ない。
 大山忠作氏は、そのような時代背景を感じてこの作品を起草したのではないか、そう思う。  画家は世間に無頓着でいいとよく聞くが、そうではあるまい。確かに花鳥、風月を描く場合、殆ど一般 のこととは無縁のように思われるが、やはり何処かに今様のセンスが現れるものなのである。
 この作品のエスキースとして、日春展に「龍翔鳳舞」が出品されている。邪気を祓い永遠の繁栄を象徴する金の龍と、聖徳の天子の兆として現れ、東方より太陽の光に乗って飛んでくると云われている鳳凰、二つの瑞祥の想像霊獣の間に昇る太陽、すなわち日本の象徴を描き加えたのが今作「日章龍鳳図」であり、作家の母国日本に対する偽らざる思いであると感じられる。表現が純粋でストレート、それがこれまでの氏のモットーで、「めでたい絵作りの試みである。」と氏自身が語っているが、よく見ると絵の中で龍と鳳凰が何かを語りあっているようである。『おーい白鳳君、しばらく日の本の国を離れていたがそろそろ戻ってやろうと思ってるんだがなー!』、『じゃあ、私はもう少ししてから伺います』なんて。そんなウイットの効いた構成も大山流といえるだろう。
 金、墨、赤、白の四色に限定した色彩構成だが、実に空間作りがよく、切れもいい。  ちなみに鳳凰はつがいで、鳳は雄で「節節」と鳴き、凰は雌で「足足」と鳴く。この鳥は決して殺生はせず、梧桐に宿り、竹の実のみを食べ、醴泉を飲むと云う。              

(松原)

 

  −瑞祥の中に新年の陽が昇る−
「日章龍鳳図」