第42回日展より

―伊吹の風景に日本の美を重ねる

 

中路 融人

「雪の朝」

 

 第42回日展より中路融人氏の作品「雪の朝」を紹介させていただく。
 中路氏はこれまで琵琶湖、それも湖北を中心とした四季の風景をシリーズとして描いてきている。少し日展出品の湖北シリーズを振り返ってみよう。第32回展に満開の桜越しに竹生島を描いた「桜と島」、33回展に湖北の春の水田「朝霧」、第36回展に枯れ葦の水路越しに竹生島「望湖」、第37回展に水際の樹木を逆光に捉えた「耀」、第38回展では葦に透けて見える霧の湖北を、そして第39回展は湖中の冬枯れの木を雨中に捉えた「冬の日」。氏は湖北の風景に、日本特有の光を如何に表現するかという命題を持って取り組んできたと言って過言でないだろう。湿った空気を介在する光と影、わびさびの世界に通じるような氏の名品が数多く生まれている。2004年末に、東京、名古屋、横浜、京都、大阪と巡った『近江十題展』での1点、六曲一隻の「夕照の木立」は強烈な印象で、今も深く記憶の中にある。
 しかし、それと平行して描いてきたのが霊峰富士と伊吹山である。富士は日本の象徴としての存在感をコンセプトに置き、冠雪の鮮烈な伊吹山は氏の美意識と共鳴する。2007年の『近江の四季燦燦と』と銘打った個展で拝見した八曲一隻の「伊吹山」は1990年に一応の完成をみて、その後17年をかけてあたためてきた作品で、豪雪の関ヶ原付近からの大パノラマであった。冬、新幹線で目にする風景であり、実際中路氏も新幹線からの景観に感動して、その場所を訪ねたとお聞きした。恐らく未発表の伊吹山の作品(スケッチ、エスキースの小品)は多数あると推測するが、今作の「雪の朝」も山の角度から新幹線沿いのとある場所からの作品と思われる。雪の反射で逆光気味の、手前の畔林の樹木越しに、雪を被った田畑が広がる。そして、その先には麓の集落を圧するが如く伊吹の山容が迫り来る。描き手と伊吹山までの間に凛とした冷気を孕む繊細な空間が感じられる。