葦の詩 小松 欽展

 

小松 欽

 

 葦ペン一本で描きあげる小松欽の個展。ギャラリー企画新春展として開催された。
 小松と葦ペンのつき合いは長い。油絵に行き詰まりを感じ出した頃、自宅近くの多摩川に自生する葦に目が止まった。これで描けないものかと試作を始めたのが1969年頃。この後7、8年間は日本の海岸を描き歩いたという。1978年から3年間はスペインにも住み、田舎の風景を描いている。小松欽の画面に潜む臨場感は取材の密度の濃さに起因するところが大きいのだろう。なにせ葦ペン一本の仕事であるが故に現場の空気を体感すること、そして取材対象と闘うことが一本の葦ペンの微妙な動きを呼び起こすことが想像できる。
 掲載の「双棹譜」は、平成6年の長良川取材に稿を得たもの。小冊子「鵜と鵜匠」文中には取材の生々しい模様が、小松独特の文体で記されている。鵜を描きに来た画家が鵜と鵜匠の闘いの現場に打ちのめされる短篇だが、これを読むと小松の「葦の詩」の本質を少しは見い出せたような気になる。そして小松の言う「混沌の中の秩序」を画面の凄まじいリアリティーに思うのである。一本の葦が紡ぐ世界。 (シノハラ)

 

   

*双棹譜