−追悼−
成 瀬 映 山

 弊紙アートインタビューで成瀬映山氏の書斎をお訪ねしたのが今年の3月18日。その頃はすこぶるお元気で個展の準備と作品集作りを精力的にこなしていた時期であったと思う。それが、半年も経たないうちに急逝(7月16日、87歳)されることになるとはよもや思いもよらぬ事だった。
 成瀬氏は28歳のころ青山杉雨師に出会い、書の道に入ったというが、当時からすれば少し遅いスタートであったと言える。しかし、子供時代に既に歌舞伎、芝居に興味をもち、やんちゃをしていたというから芸道に通じるセンスを持たれていたと思われる。また、書に進もうと決心する前に一時期絵画の勉強をしており美術分野にも広く興味をもっておられたようで、美意識を感受する成瀬氏の素地を青山師も看破していたのであろう、2年間程の東横百貨店の書道部(青山講師)入部後見込まれて直弟子となった。古典は呉昌碩から始め、宋の時代に興味を持ち、黄庭堅、蘇東坡に取り組んだとお聞きしたが、青山師は一切強制的な指導はされなかったと言う。そうして35歳で日展初入選を果たし、44歳で特選、平成4年には日本芸術院賞を受賞、平成13年には文化功労者として顕彰され、謙慎書道会の重鎮としてあるばかりでなく、穏健で視野の広い書道眼を持つ日本書壇のリーダーとして貴重な存在となっていたといえる。また、青山師の逝去後、師の社中「槙社文会」の書展を立ちあげ、日展漢字系の主要団体にまで押し上げた功績は極めて大きく、謙慎の中核となる若手の精鋭を多く排出している。文化勲章の呼び声も高かっただけに尚更に急逝が惜しまれる。 謙慎書道会主催のしのぶ会が9月19日午前11時半から帝国ホテル東京で開催される。慎んで弊紙からも昨年の日展作を紹介し哀悼の意を捧げたい。
       (松原)

    文化功労者   日展参事

「秋 興」 第38回日展