第22回東京水穂会書展より

副会長

土橋靖子

 

 この歌は、古今集「世の中は 夢か現か 現とも夢とも知らず ありてなければ(読人知らず)」を本歌どりした、新古今和歌集の選者でもある藤原家隆の歌である。本歌は極めて仏教思想の無常観が込められているが、本歌どりは「桜」、「雲」という絵画的な情景(夢幻的世界)が浮かびくる。散りゆく花のなごり、観念・思想ではない日本人なら誰しもある情感に転化している。観でない無常感、一種の美意識である。
 作家は、そうした心の中の美意識を「書」で具現しようと試みた。光が当たった金箔の雲、はらはらと舞落ちる桜花、その様子と淡墨の用筆の機微が絶妙だ。作品創りの根源がそこはかと漂う。(松)

 

 

 

桜花ゆめかうつつか白雲の
絶えてつねなき峰の春風