第23回東京水穂会書展より


副会長 土橋 靖子

 

 恒例の東京水穂会書展より、改組 新 第3回日展で内閣総理大臣賞を受賞した土橋靖子の「さよふけて…」を挙げる。千載和歌集/巻第一の藤原道信朝臣の歌である。道信といえば、将来を約束された家柄の貴族であったが23歳で早世した和歌の名手。百人一首52番の哀愁的恋情ある「あけぬれば」が有名だが、この歌は、続く制作と発表の忙しさから解放され、久しくひとり静かな気持ちで夜更けの一時をくつろぐ作家の気持ちとシンクロしたのであろう、梅花そのものは見えず、夜空を漂う香りだけがする余情感。そんな穏やかな気持ちの広がりを、たおやかで繊細なかなの線情にのせた。潤墨部の視点対比と極細線の震えの機微が立体的空間を構築する。イメージの具現と技術の融和だ。(松)

 

 

 

さよふけて かぜやふくらん 花のかの
にほふここちの 空にするかな