平城遷都1300年記念日本代表書作家展

 

杉岡 華邨

「馬酔木」

 

 平城遷都1300年を記念して、奈良を書く102人の書家による日本代表書作家展が、奈良市美術館において(社)平城遷都1300年記念事業協会、奈良市、(財)杉岡華邨書道美術財団の主催で開催された。出品は巨匠作家18名、代表作家76名に奈良代表作家の8名。その選定基準は難しいが、院賞以上を巨匠作家とし、日展作家が殆どであるが、それぞれ一派をなす力量を有する作家を代表作家としたことはそのメンバーから推測できる。
 その中、巨匠作家18名の全作品を紹介させて頂く。杉岡華邨「馬酔木」は、春日の杜にほのかに匂う馬酔木に奈良の自然の深さを感受した尾上師の歌を悠揚な筆致にのせた。おおらかな運筆で奈良の思いでの光景を浮かべた高木聖鶴「神鹿」、古谷蒼韻は扇面に独特の和様漢字を用いた柔らかなかな構成で魅せる。日比野光鳳「奈良の都」は穏やかながら細線の切れがあり気品がある。寧楽百首より鹿の角切りの詩は今井凌雪、心の高揚が動の美をひきだした。奈良に相応しい六朝造像体によせて、万葉仮名で渇筆ひびく尾崎邑鵬、栗原蘆水は現在の気持ちが選文に結びつくおおらかな直截さがいい。霧に隠れた山間の風景を思いおこすような繊細な絵心の榎倉香邨、奈良といえば芭蕉のこの句が浮かぶ人が多いのだろう、甫田鵄川、新井光風と18名の中で同句を書いた。しかし、思いと表現は見事に異なる。悠然とした甫田氏に対し、新井氏は縦振幅を効かせて動感豊か。梅原清山は寧楽百首よりズバリ「寧楽」、こうした切り取り方の金文展開が氏の特徴だ。津金孝邦「見渡者」は稚拙美の域を知る。線と空間、文字とことばが巧緻に響きあう。応神天皇の御歌謹書で気韻生動を演出構成する井茂圭洞、用筆の機微も多彩である。万葉仮名を結句に用いて変化を意図した黒野清宇、池田桂鳳は朝霧の中、俯瞰した奈良の街並みのイメージか、渇筆に「奈良」の文字が印象的。杭迫柏樹「神光照室」は、素とした中に入魂がある。訥々と平かなを主に単字の響きで観者の視線を誘導する構築美は小山やす子、樽本樹邨は、従来の重さを廃した軽い筆致で奈良の自然に思いを馳せた。
 今回の作品102点は全て奈良市に寄贈される。それを受け、所蔵先の奈良市杉岡華邨書道美術館で大規模、長期にわたる企画展を開催する。(松)