春洋会選抜書展より

―超大作の清澄な世界―

会長

恩地 春洋

「一琴一鶴」

 春洋会選抜書展出品二作のうちの一点。他一点は13面にモノクロ紹介。題材の如く清澄な世界を縦6尺、横15尺の広大な紙面に表現した。セントラル美術館正面の大壁面に飾られたこの作を前にしたとき、恩地春洋の書業を顧みていた。恩地氏は土佐の人。土佐と言えば川谷横雲、尚亭、高松慕真、手島右卿、南不乗らの現代書の礎を築いた錚々たる名が頭に浮かぶ。そして忘れてならないのは川崎梅村、のちの川崎白雲である。昭和書壇の真只中にありながら、ある日突然書壇の一切から身を引き、全国放浪の旅に出た伝説の書家である。恩地氏はこの川崎梅村に師事し、梅村の気骨の精神を受け継ぐ。やはり土佐のいごっそう。いつもは温和な人柄だが、書においては信念を書き通す。独立調とは一線を画す表現を常に主眼に置いてきた。今展の超大作においてもその意気は変わらない。書は全人的な仕事であると断言する。空間構成の創意も大事だが、それを超えたところに書の営みがあり、そして人間の営みが表出されることをこの作品は静かに語っているようだ。見るほどに清澄な響きが余韻となる。
     (篠原)