第48回二元展より

会長

嶋津俊則

 みずから会長の要職を務めることしの第48回二元展に、『巡礼の道』と題する大作3点を発表、うち「ロカマドール」と「ル・ピュイの礼拝堂」をここに紹介させていただく。
 嶋津俊則は外国風景を描くが、山や田園の四季などのいわゆる自然ではなく、もっぱら都市風景をモティフとする。それも現代都市や名所旧跡、観光地ではなく、古い聚落や街ばかりを好んで描く。そこは市街地の街並や路地を挟む家並などではなく、ここに掲出の2作品もそうであるように、古代や中世の臭いや香りを漂わせる聚落全体の姿を俯瞰するようにとらえる。それがこの画家の視点である。
 「ロカマドール」は崖のある段丘の地を貫く街路沿いの家並を、「ル・ピュイの礼拝堂」は大きく大地に突き出した岩山の上に天を衝くような礼拝堂と地にひれ伏すように櫛比する赤い屋根の家並が埋め尽くしている。
 画家はこれまで〈歴世の街〉という題をよく付してきた。〈歴世〉とは、世から世へ移りすぎること、である。世々、代々、何世紀もの歳月をくぐり抜けてきた。様々な歴史を閲し抱えこみ、乗りこえ幾星霜を経て今に生きている。幾世代も続いて人々が日々の暮らしを送っている。そこに画家嶋津の心は惹かれるのだ。
 〈風景〉というものは、どこかに、誰にでも同じものとして在るのではない。人それぞれの心のうちに生まれ、描かれるものであろう。風景を見る目は、その人が生きてきた過去の記憶、そしてこれからの記憶と深く関わっている。ある風景を前にして、この景色はずっと前から心の奥で出会っている、という不思議な懐かしさを覚えるときがある。これをデジャ・ヴュ(既視感)といってしまうと平凡だが、〈見知らぬ町だから懐かしい〉(清岡卓行氏)ということになるだろうか。
 画家が外国の旧い石の街に惹かれるのは、遠い過去から現在まで、そしてこれからも続くであろう人々の歴史と生活への親和感からであろう。そうした思いを喚起させてくれる風景が、嶋津が描きたくなる〈心に適う〉風景なのだ。  

(中野)

 


 

 

巡礼の道・ル・ピュイの礼拝堂/巡礼の道・ロカマドール